超!独特『奇界遺産』の「佐藤健寿展 奇界/世界」高知県立美術館
奇妙なモノしかない!けど「奇妙なモノ」は世界に存在しない!?
みなさんは、この数年で「奇妙だな」と思うことに、どのくらい触れることができましたか?
この世界には、奇妙で不思議で、知的好奇心をくすぐる奇景や習俗、信仰といった「wonder」が、至る所に散りばめられています。
でもそれって、実はあなたのすぐ傍にあるかもしれません―…
コロナ禍により、ネットや交通網の発展などで接続過剰となった世界は、再び物理的に切断されました。
そんな外の世界と隔絶された、私たちの閉塞感を吹き飛ばす企画展がコチラ!
現在、高知県立美術館では「クレイジージャーニー」や「タモリ倶楽部」などのメディアで話題の写真家、佐藤健寿(さとうけんじ)さんの展覧会「奇界/世界」が開催中です!
これまで120ヵ国以上を巡り、世界中の「奇妙なモノ」を20年間に渡って撮り続けた佐藤さんの作品、200点あまりが一堂に展示されています。
高知県立美術館でしか見ることのできない「高知県限定の撮り下ろし」や、実際にチェルノブイリなどの撮影先で使用したガスマスク、パスポートなどの貴重な佐藤さんの私物も必見!
「えっ、そんなコトってある!?」というワクワクを、受け取りに出かけませんか?
ラストでは、抽選でチケットのプレゼントもありますので、お見逃しなく!
芸術文化の発信地!高知県立美術館
高知県立美術館は、1993年に開館した高知県高知市の美術館。
近代・現代の美術作家や地元高知の作家によるコレクション展、国内外の多様なジャンルの企画展を開催しています。
高知中央インターを降りて車で約3分というアクセスの良さと、普通車144台分の無料駐車場がある点が喜ばれ、県外である愛媛県民にも、とても人気のあるスポットです。
高知県立美術館では2022年4月の時点で、4万2千点を超える作品を収蔵していて、その内の多くが「マルク・シャガール」の絵画と、高知の写真家「石元泰博」の写真作品。
能舞台も有する併設ホールでは国内外のパフォーマンスや演劇・コンサートなどが行われており、総合的に芸術文化と親しむことのできる美術館です。
「佐藤健寿展 奇界/世界」
そんな高知県立美術館で、現在行われている企画展は「佐藤健寿展 奇界/世界」!
高知県立美術館の学芸員 朝倉芽生さんに「これだけは見ていって!」という、イチオシの見所をお伺いしました!
「佐藤健寿展 奇界/世界」は、大きく「奇界」と「世界」の2つのパートに分けられ、「奇界」は第1・第2と展示室に分けて展示されていて、「世界」は第2展示室に展示されています。
「奇界」は、佐藤さんが世界遺産をもじって「奇界遺産」と呼ぶ、奇妙でユニークな風景、人物、建築、風習などの写真や、実際の資料が、12のテーマで並ぶ不思議な空間です。
「世界」は、奇妙なモノを撮影する旅の中で、ふと撮影された名もない風景や印象深い人々などの旅の記録が、黒縁に静かに収まっています。
また「SATELLITE(サテライト)」という35分間の映像展示は、1階のシアタールームで上映されています。
「SATELLITE」は、同名の佐藤さんの人工衛星写真集の動画バージョンです。
まるで自分が、フワフワとした宇宙空間に居るのではないか?と錯覚してしまうような、時間を楽しめるでしょう!
また、第1展示室の入り口(2階エレベーターホール)では、展覧会開催記念インタビューの映像展示が流れています。
「どうして、このような写真を撮ったのか?」「写真にかける、佐藤さんの想いとは?」そういった内容が、佐藤さんご本人によって語られている、14分間のインタビュー動画です。
ぜひ、入場前に観覧してみてくださいね。
「奇界遺産」の象徴でもある、巨大な顔!
【スイ・ティエン公園/ベトナム】2009年©KENJI SATO
さて、佐藤さんのベストセラー写真集「奇界遺産」といえば、この写真を連想する人も多いのではないでしょうか?
この写真が表紙を飾る「奇界遺産」が発売されてから12年経ちますが、今なお増刷され続けているなんて、出版業界からすればwonderそのもの!
被写体は、ベトナムのホーチミンに位置する、スイ・ティエン公園(巨大な庶民向けテーマパーク)内にある「伝説のベトナム初代国王」がモデルのウォータースライダーです。
現在、この彫像の色は赤ではなく違う色に染まっているそうですよ!
ココでしか見られない!神秘「いざなぎ流」
みなさんは、民間信仰の「いざなぎ流」をご存知でしょうか?
高知県の山奥、香美市物部(かみしものべ)に伝わる古い祈りの形です。
第2展示場では、佐藤さん撮り下ろしのいざなぎ流の祈祷写真や、実際に使用される呪術アイテムが展示されています。
写真中央付近にある白い棚は、祭りに欠かせない、山の神々に祈るための祭壇。
どことなく愛嬌のある、顔の付いた白い和紙は「御幣(ごへい)」と呼ばれる、山の神々や精霊に宿っていただく依り代だそう。
特徴的な帽子を被っているのは「太夫(たゆう)」と呼ばれる、いざなぎ流の伝承者です。
佐藤さんが捉えた、目には見えない神々や精霊へ一心不乱に祈りを捧げる太夫の姿。
そんな、人か?神か?定かではない神秘的な存在の太夫は、実は穏やかな笑みをたたえた普通の男性だったことが、展示を見れば分かるでしょう。
太夫の写真にも「日常と奇妙の狭間」が見られ、ゾクッとさせられますよ!
ココでしか見られない2!「KOCHI WONDER」
「え!?高知にそんな場所があるの??」と思わず口に出してしまいそう!
2019年に高知を訪れた佐藤さんによって撮影&チョイスされた、高知のヘンテコな場所が集められた「KOCHI WONDER」のコーナーは、第1展示場の中程にあります。
波の浸食により出来た、天然の神秘的な海食洞『伊尾木洞(安芸市)』や、建築素人のご夫婦が自力で作りだした巨大な『沢田マンション(高知市)』など、計6点。
「この企画展を見終わったら、寄って帰りたい」と思ってしまう、そんな奇妙で素敵な場所が選ばれていますよ!
ココでしか見られない3!「WONDER/MICROCOSM」
【金剛宮/台湾】2009年©KENJI SATO
学芸員の朝倉さんがイチオシする展示物の一つが、「WONDER/MICROCOSM」。
撮影地で、佐藤さんがガラケーやスマホで何気なく撮った動画や、ドローンで上空から撮影された映像などが集められた映像作品です。
「あっ、これは青森県『新郷村キリストの墓』で盆踊りをしている動画ですね」
「つい先ほど目にした展示物が、実際に動いている様子が見られるのが面白いですよね!」と朝倉さん。
その場の空気感や躍動感など、静止画の写真とは違った味わいや良さがありますよ!
企画展でしか見られない、思わず魅入ってしまう貴重な動画の上映時間は、約30分。
実にユニーク!空飛ぶ棺桶!?
第2展示場の入り口で、ひときわ目を引くのが「棺(飛行機)」。
国立民族学博物館所蔵の、ガーナに住むガ族の棺桶です。
1960年頃に「一度、飛行機に乗ってみたかった」と言い残してこの世を去った母の願いを叶えるため、木製の飛行機型の棺桶を作った1人の男性がいました。
それからというもの、彼の元には「こんな棺桶を作って欲しい」とオーダーが殺到したそう。
佐藤さんが撮影した棺桶には、蟹の形や剣道の防具など「え!?コレであの世へ送り出すの?」と驚いてしまうモチーフがたくさん!
ぜひ、異国の『死』というモノへの価値観の違いを感じてください。
日本の『白鹿権現』とトーゴの『呪術師の市場』
2012年に佐藤さんが撮影した、西アフリカのトーゴにあるブードゥー教の呪術市場には、獣の白骨や動物のミイラがズラリ。
「これは一体、何に使うの…?」と疑問に思ってしまうソレらは、現地の方にとっては魔よけのお守りであったり、粉末にして飲めば身体の調子を整える秘薬であったりするそう。
実は日本の大分県に、トーゴの呪術市場にそっくりなヴィジュアルをしている、おびただしい数の動物の頭蓋骨が積み上げられた洞窟があることを…ご存じでしたか?
猟の安全を祈願する『白鹿権現』と『呪術師の市場』。
遠く離れた地で、どことなく似たような人間の営みがあるって、なんだか不思議ですね。
死と菊の花、『世界』はどこかで繋がっている?
筆者が「おっ!」と感じたのが、第2展示場「世界」エリアに、隣り合わせで展示されている、『Texas, United States(2018)』と『Varanasi, India(2007)』。
左はボディ・ファーム(死体農場)と呼ばれる、アメリカのテキサス州立大学にある法人類学研究施設で撮影された、野晒しにされた遺体とキク科の花。
右は遺骨も葬られる聖なるガンジス川と、献花されたマリーゴールドの花びら。
アメリカとインド、全く別の場所で、10年ほどの時間差で撮られた写真ですが、どことなく似ていませんか?
そして、「奇界」で展示されているメキシコの『死者の日(2016)』で供えられていたのも、キク科のマリーゴールドで―…
そういえば日本も、仏さまに供えるのは菊の花ですね。
もしかして、世界はどこかで繋がっているのでしょうか??
そもそも、世界に「奇妙」なんて無い!?
いかがでしたか?
ご紹介できたのは200点中の、ほんの少しでしたが『奇界/世界』の面白さが伝わったでしょうか。
観覧される際はぜひ、撮影された「年」にも注目してみてください。
年内だったり、たった数年前だったりするものもあります。
「えっ!近代でも、そのような暮らしや風習が残っているの!?」といった、驚きがありますよ。
ちなみに、このロシアで撮られた写真『ネネツ(2017)』は、たった5年前のもの。
冬は-40℃にも達する極寒の地で、トナカイの群れを放牧して暮らすこの民族は、トナカイの鮮血も生肉も、全てそのまま食します。
この企画展を隅々まで観覧することで「世界中には、こんなにも不思議な風景や風俗といった人間の営みがあるけれど、日本は日本で、世界の方からすると「あれっ!?」と思うような文化がある!」ということが分かります。
私たちにとっての日常は、相手にとって普通ではなく―…
私たちにとって奇妙に感じるソレは、相手にとっての日常なのです。
ミュージアムショップには期間限定で、佐藤さんの書籍をはじめ、ユニークなTシャツやキーホルダーなどのグッズが多数、並んでいます!
それらを眺めるだけでも、あなたの中で、すでにワクワクが始まっているのが分かるはず!
みなさんも、「世界」の奇怪な「奇界との境界」を巡る旅に出かけませんか?
抽選でペア15組・30名様に無料入場券をプレゼント!
「佐藤健寿展 奇界/世界」
企画展+コレクション展の両展示を全てご覧になれるチケットです。
応募期間:2022年7月19日~8月1日
当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせて頂きます。
■ 高知県立美術館 夏の定期上映会「奇界な映画」
ルネ・ラルー監督の傑作アニメ「ファンタスティック・プラネット」、キム・ギヨン監督の怪作「殺人蝶を追う女」、伝説のカルトホラー「恐怖の足跡」、ミムジー・ファーマー主演の異形のミステリー「渚の果てにこの愛を」を上映。
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■ 高知ライブエール・プロジェクト サクソフォーン四重奏団 クワチュール・べー 結成15周年記念コンサート
国内外での大活躍のクワチュール・ベーは、15年前、高知県立美術館が県内の小中学校にプロの生演奏を届ける出前クラシック教室を始めるきっかけとなったサクソフォーン四重奏団。
結成15周年を機に、久々の高知でのコンサートが実現。
【出演者】Quatuor B:國末貞仁(Sop)、山浦雅也(Alt)、有村純親(Ten)、小山弦太郎(Bar)
イマナニで「高知ライブエール・プロジェクト サクソフォーン四重奏団 クワチュール・べー 結成15周年記念コンサート」の情報を見る
■ しりあがり寿さんが高知県美にやってくる!
漫画家・しりあがり寿さんによるワークショップ&作品展示を行います。
江戸時代の浮世絵師・北斎の作品を現代的ユーモアで描き直すパロディなどで近年活動の幅を広げているしりあがり寿さん。
今回の展示のテーマは北斎、そして幕末土佐の絵師・絵金!
しりあがり寿さんのこれまでのパロディ作品や、高知で行うワークショップで参加者と一緒に作ったアニメ映像を展示します。
思わずクスっと笑ってしまうユーモア満載のしりあがり寿ワールドをお楽しみに!
高知県立美術館 公式HPにて「しりあがり寿さんが高知県美にやってくる!」の情報を見る
■ 佐藤健寿展 奇界/世界
開催期間/~9月11日(日)
開館時間/9:00~17:00(入場16:30まで)
開催期間中の休館日/会期中無休
観覧料/一般1,200円、大学生850円、高校生以下無料
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■ 高知県立美術館
住所/高知県高知市高須353-2
電話/088-866-8000
営業/9:00~17:00
定休/年末年始
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高知県立美術館 公式HPはこちら