【風美堂製菓】 しまなみ海道の産品と老舗の情熱が生む、和菓子とひんやりデザート 【愛媛/今治市】
今治の老舗和菓子店に新展開! その歴史と思いを紐解く
今治の老舗、風美堂製菓さんの代表銘菓は「しまなみタルト」。
愛媛県産の「みかんたまご」を使用し、ふわっふわに焼き上げたスポンジ生地に、「しまなみ海道の産品」を使って丁寧に炊き上げた風味豊かな「あん」を、一本ずつ手作業で巻き上げた和菓子です。
そしてこのほど、口溶けなめらかなひんやりデザートが発売されました。
全くジャンルの違うスイーツに思えますが、そこには老舗ならではの技術とアイデアが活きていました。
創業60年以上の歴史と、しまなみ海道の産品が生み出す美味
風美堂製菓さんの創業は、昭和37年。
創業者である先代の近藤靖さんが奥様と共に、ふるさと愛媛・今治で立ち上げました。
靖さんを突き動かしたのは「美味しいお菓子を作りたい!」という純粋な情熱。
修業先にて腕を磨いて21歳で創業し、妥協のない美味しいお菓子の製造に汗を流しながら、自転車の荷台に商品を積んで販売にも出るなど、ご苦労もあったそうです。
現在の取締役である近藤勝裕さんは、父靖さんから風美堂の歴史と味を受け継いだ二代目。
目まぐるしい時代の変化を「チャンス」と捉えながら、日々邁進してこられました。
しまなみ海道の産品を使った「しまなみタルト」。
代表銘菓「しまなみタルト」のあんは10種類もあります。
定番の抹茶あん・ごまあん・ゆずあん・いよかんあんの4種類から始まり、秋冬限定として開発した、鳴門金時あんと栗あんがあまりにも人気で、通年商品になりました。
現在、春は桜葉あんといちごあん、夏はぶどうあんとレモンあんなど、季節ごとに味わえるラインナップもあり、季節限定商品の発売を毎年楽しみにしているお客様も多いそうです。
ちょこっと食べたいときに嬉しい、一切れカットタイプもあります。
しまなみタルト」は平成25年に、第26回全国菓子大博覧会で金賞を受賞しました。
家族のように楽しく切磋琢磨できる職場も、美味しさの秘密
風美堂製菓では、原材料だけでなく「手作り」にもここだわっており、タルトを巻く作業も、手作業です。
生地の具合を見ながら「あん」の盛り具合や巻く力を一本一本加減しながら手早く巻き上げ、半日寝かせ、生地とあんが落ち着いてから包装されます。
この日、しまなみタルトの巻き作業を担当されていた従業員さんは、なんとこの道12年!
美味しさを追求する中で、一番こだわっているのは「あん」。
タルトだけでなくそれぞれの商品にあわせて、炊き方、水分量などが全く違います。
この「あん」の炊き上げを担当するのが、三代目彰乃さんのご主人である翔太さんです。
勝裕社長と翔太さんは、休日になるとお二人で釣りに出かけるなど師匠と弟子のような関係で、日々ノウハウを学びながら、より美味しい「あん」を追い求めています。
大きな釜でこの日炊いていたのは、大粒の栗がゴロゴロ入った、栗饅頭のあんでした。
こちらは、しまなみタルトに使われるいよかんあん。
爽やかな味わいです。
風美堂製菓さんの従業員さんは総勢25名。
まるで全員が家族のような職場で、ベテランの方は勤続40年以上にもなります。
勝裕社長の「お子さんと過ごす時期を大切にしてほしい」という思いから、学校行事や夏休みなどでの休暇を積極的に取れる体制が整っており、お子さんの急な発熱や家族の入院などで急に仕事を休まなくてはならなくなった場合も、従業員さんたちでカバーし合っているそうです。
昨年から新しく仲間入りした方たちもおり、和気藹々と切磋琢磨しながら、美味しいお菓子作りに取り組んでいらっしゃいます。
風美堂製菓ファミリーの確かな技術とチームワークが、味と歴史を支えているのですね。
従業員さんたちを囲んで、左端が翔太さん、右端が勝裕社長。
社内あげてのバーベキューやカラオケ大会、ボウリング大会などの親睦会には、関連業者さんたちもワイワイと参加。
昨年は、産直市の売場見学も兼ねて、香川への社員旅行に出かけたそうです。
移動中のバス内では、業務内容に関するクイズ大会や抽選会も行われたとか。
美味しさと楽しさを追求する、大エンタメ企業ですね。
しまなみタルトをはじめとした風美堂製菓さんの美味しいお菓子は、四国各地のスーパーや産直市、道の駅などでも販売されています。
包装作業を終え、出荷を待つしまなみタルトたち。
取材日は大阪でのイベント出店直前ともあって、ご準備に大忙しでした。
今治市内にある産直市「さいさいきて屋」内にある、風美堂製菓さんの売り場です。
出来立て・工場直送、風美堂製菓のしまなみタルトは「メルカリShops」でも購入可能で、遠方のお客様からのご注文もあるそうです。
風美堂製菓 メルカリShopsはこちら
※季節ごとに購入可能な商品が異なります。
ほっと一息つきたいときや歳時も彩る、豊富な商品バリエーション
風美堂製菓さんでは、しまなみタルトの他に、栗まんじゅうやどら焼などの和菓子も製造されていますが、商品ラインナップはなんと100種類ほど!
レトロなパッケージも素敵なロールケーキ。
自慢のあんと大粒の栗がどーんと入った栗どら焼。
こちらはさらにバターが入った、背徳の味。
王様の王冠には大粒の栗が…栗きんぐケーキ。
大粒の栗がごろっと白餡にくるまった栗まんじゅうも人気です。
また、地域の歳時に欠かせない商品も手掛けています。
取引先の地元スーパーなどからの要望で、40年ほど前からお正月の鏡餅も製造。
毎年およそ400〜500袋の餅米を仕入れ、「元旦に従業員さんたちにお仕事してもらうことは避けたい」と、製造作業は一家総出で夜を徹して行われます。
新年が明けても、元旦の開店までに各納入先店舗の商品撤収作業を完了させるため、午後3時頃ようやく「あけましておめでとうございます」となるんだとか。
「よく伸びて、絹のような餅」と評判で、地元の方々の新年には欠かせない商品となっています。
創業60年以上のノウハウが生んだ、ひんやりスイーツ
昭和37年の創業以来、愛媛県産・しまなみ産の果汁やフルーツ使用にこだりながら、四国・今治で歴史と美味を育んできた風美堂製菓さんですが、このほど新ジャンル「しまなみ海道のフルーツアイス」と「四国しまなみアイス」を開発し、話題となっています。
「和菓子」と「アイス」、一見全くジャンルの違うスイーツに思えますが、口溶けの良い焼き菓子の生地を作り出す長年のノウハウが、アイスのなめらかさを生み出す技術に活かされていると聞いて、納得です。
バリエーションは、ソフトクリームにフルーツソースと果肉をトッピングした「しまなみ海道のフルーツアイス」が3種類、カップタイプのジェラード「四国しまなみアイス」が9種類の全12種類。
クリーミーな食感が舌の上でとろけ……新鮮な素材やフルーツの芳醇な風味が鼻腔をくすぐる…文句なしの美味しさです!
来島海峡サービスエリア、糸山公園 来島海峡展望館、さいさいきて屋などで販売されています。
ソフイトタイプの「しまなみ海道のフルーツアイス」は、なめらかなソフトクリームにしまなみ産フルーツのソースと果肉をトッピング。
カップタイプのジェラード「四国しまなみアイス」、こちらはレモン味。
こちらは、まるで白桃を丸ごとアイスにしたかのような、ジューシーな白桃味です。
「しまなみ海道のフルーツアイス」は、さいさいきて屋の冷蔵ケースにもあります。
四国しまなみアイスが購入できる自販機は、来島海峡サービスエリアなどに設置されています。
三代目に引き継がれる、風美堂のパッション
勝裕社長の美味しさへのアツい思いを引き継ぐのは、三代目彰乃さん。
迷いやプレッシャーもあったそうですが、父・勝裕社長の背中を見て「継ぎたい」という気持ちが強くなったという彰乃さんの座右の銘は、阿波踊りの掛け声「同じ阿呆なら踊らにゃ損々」。
旅好きでもあり、ソフトクリームやアイスの研究のために、全国各地へ足を運ぶこともあるそうで、美味しさの研究にも余念がありません。
大胆な発想と当たって砕けろマインドは、お父様譲りだそうです。
新しいアイスデザートや味のバリエーションを研究中とのことですので、今後の展開からも目が離せませんね。
左端が、三代目彰乃さん。
初代の情熱が生み出し、二代目勝裕社長によって育まれてきた味と歴史が、三代目に受け継がれようとしています。
「日々の暮らしの中に多くのヒントがあり、美味しいお菓子のアイデアも次々に湧いてくる」と語る勝裕社長は、製造工程においても、大胆な発想で効率化を実現しました。
液状の生地を機械に流し込む作業は、従業員産たちにとって大変な力仕事でした。
「肩が痛い…」「腕が上がらない!」と嘆く様子を見て、なんとフォークリフトを購入して改造し、大量の生地を楽々流し込める装置を開発してしまったのです。
フォークリフトを改造して作られた、勝裕社長オリジナル装置です。
還暦を迎えられてもなお、新しいことにどんどんチャレンジし続ける勝裕社長。
すべての経験が「風美堂の味」に活きているそうです。
「若い頃に学んだことが次々と繋がり始めたのは、五十代を過ぎてからでしたね。日々勉強です。新しいことをするのって、ワクワクしますよね!仕事をしているというよりは、毎日を楽しんでいます」というお話がとても印象的でした。
取材を経て、風美堂製菓さんの大ファンになってしまった筆者です。
■ 風美堂製菓
住所/愛媛県今治市中寺70-5
TEL/0120-459-473
営業時間/8:00〜17:00 ※工場での直販はしておりません。
風美堂製菓 公式HPはこちら