砥部焼の名工、工藤省治遺作展 【愛媛・砥部町】

  

えだまめ    イマナニ体験レポート

現在砥部焼の代表的デザインを手がけた名工、故工藤省治氏を偲ぶ

こんにちは、砥部焼ファンのえだまめです。
2019年10月に亡くなられた、砥部焼作家の故工藤省治さんの遺作展に行ってきました。

突然ですが、皆さんは「砥部焼ってどんなやきもの?」と聞かれた時にどのような器が思い浮かびますか?
愛媛で大変なじみのある砥部焼。
「厚手で、重くて、白くて、藍色で絵が描かれとる」という風に答える人が多いのではないでしょうか。

では、「どんな絵が描いてある?」と質問が続いたら?
「唐草模様」「花とか植物」「線」など様々な答えが出てくると思います。

これら現代の砥部焼の代表的な文様の殆どを生み出したのが、梅野精陶所(梅山窯)でデザインを行っていた工藤さんなのです。
1-1
会場入り口にはタイトルにもある代表作「唐草文様」の大皿が。
会場入り口にはタイトルにもある代表作「唐草文様」の大皿が。 陶磁器作品と絵画作品、約160点が出展されていました。 デザイン原画。筆や鉛筆で描かれていました。 画家を志していたが縁あって砥部へやってきた、とのこと。 西予市城川町の「どろんこ祭り」の団扇や陶器作品など貴重な品も。
今回の遺作展は、工藤さんの約50年の仕事を広く紹介する構成になっていました。

菊絵、笹絵、ナズナ手、草花文などの「THE 砥部焼!」な梅山窯の製品はもちろんですが、自宅兼作業場であった「春秋窯」で作られたロクロ成形のシンプルな白磁作品も多数展示されていて、この対比だけで、工藤さんが単なる図柄のデザイナーではないということが分かりました。

会場には陶磁器のデザイン原画の他、絵画やコラージュなどの平面作品が展示されていて、 元々は絵描きを目指していたという工藤さんの貴重なアート作品にも触れることができました。

その他、叙勲のメダルや証書、関係者からの追悼メッセージや最晩年に作られた国道33号の中央分離帯の大鉢の秘話、町内にある陶壁画を紹介したパネルなどもあり、大変見ごたえのある展示会でした。
2-1
出身地の東北のこけしから着想を得た「菊絵文様」
出身地の東北のこけしから着想を得た「菊絵文様」 野を跳ねる兎と月と山。シンプルだけどユーモラスな図案。 漢字一文字を入れた酒器。私もぐい呑を持っています。 花瓶や食器にたくさん使われている草花文様。 呉須(藍)だけでなく赤絵でもデザインをされています。

たくさんの窯元がある砥部。11月には秋の砥部焼まつりが開催!

ロクロで巨大な作品を作ったり、繊細で写実的な絵付けをしたりと、砥部には素晴らしい陶芸家がたくさん居ます。
砥部焼の窯元は家族や個人でされている事が多く、少量生産でとても個性的。
私の周りにも「○○窯のファン」とピンポイントで言う人が結構いて、砥部焼はとても身近なものです。

およそ100軒と言われる窯元の中で、最も古くて規模が大きいのが梅山窯です。
工藤さんの凄いところは、自分一人だけが描けるものではなく、絵付け職人が品質を落とさず大量生産できるデザインを数多く生み出したという点だと言えます。

砥部焼を代表する梅山窯の製品は「使いやすい」「かっこいい」「きれい」ということから全国にファンがいます。
それは手づくり手描きのよさが伝わる工藤さんが考案したデザインの力も大きかったんだな、と梅山窯製品の展示を見て思いました。
3-1
布目と梅山窯の濃い呉須がスッキリした唐草文様の小皿。
布目と梅山窯の濃い呉須がスッキリした唐草文様の小皿。 唐草文様のコーヒーカップ。 朱線と合わせるとまた雰囲気が変わってきますね。 食卓で主張しすぎない小鉢はまさに「用の美」! デザインの奥深さを教えてくれる展示でした。
工藤さんは全国に名を知られた名工でありながら、陶芸教室や砥部焼職人向けの絵付け教室の講師を長年続け、その技術を大勢の人に惜しみなく伝えられていました。
本来はライバルとなる同業者や若手にも教えていたということは、他の産地では考えられないことだそう。

改めて会場の白磁の器を見ると、線の入れ方ひとつで表情が全く異なるということに気づかされました。
太さ、色、彫るか描くか、白磁のままにするか…デザインとはこういうものなのだ、と素人の私にも教えてくれているようでした。

本展は会期終了してしまいましたが、町内外に工藤さんが手掛けた作品や陶壁画がありますので、訪ねてみるのも良いと思います。
砥部焼伝統産業会館で主な場所を教えてもらえますよ。

私のおすすめはとべ温泉「湯砥里館」の浴場の陶壁画です。
4-1
最後の作品、とのキャプションがあった白磁蓋物。
最後の作品、とのキャプションがあった白磁蓋物。 とべ温泉湯砥里館の完成記念湯呑。 「飛びカンナ」技法で作られた重厚感のある白磁筒。 会館裏には映画「未来へのかたち」のモニュメントが。
さて、2022年11月5日(土)と6日(日)には3年ぶりに「秋の砥部焼まつり」が開催されます。
会場は砥部町陶街道ゆとり公園。

当日は約60の窯元がテントを並べて対面販売をするイベントです。
直接作り手とお話ができるので、おすすめを聞いたり、お値段交渉や掘出し物探しなどが楽しめますよ。

コロナ禍で砥部焼関連のイベントの中止が相次いだここ3年の間に、現代砥部焼の発展の礎を築いた名工が次々と亡くなられました。
工藤さんの生み出したデザインは、これからも砥部の陶工の手で作られていくと思います。
私も生涯砥部焼ファンとして、暮らしの中で使っていきたいです。
砥部焼伝統産業会館
開催時間/ 9:00~17:00
開催場所/砥部焼伝統産業会館(愛媛県伊予郡砥部町大南335)
駐車場/あり 普通30台
料金/入館料 大人:300円、65歳以上高校生・大学生:200円、小・中学生:100円
問い合わせ先/砥部焼伝統産業会館 TEL. 089-962-6600
URL/http://www.town.tobe.ehime.jp/site/tobeyakidentosangyokaikan/densan.html
reported by えだまめ