偉人・坂本龍馬の魅力を発信! 『知っちゅうかえ、龍馬?』 Part.10
エピソード:岡田以蔵の「科書」
こんにちは!坂本龍馬記念館です。
昨年2022年に高知の偉人・坂本龍馬の、多彩な豆知識をご紹介してきた本コラム。
今年も引き続き当館スタッフが、坂本龍馬記念館のいろんな魅力を発信していきたいと思います!
昨年までのコラムはこちら
今年初のコラムでは、本館に収蔵されている展示品をご紹介。
それが施設を訪れた際に足を止めて鑑賞する方も多い、こちらの”土佐藩京都藩邸史料「科書(とががき)」No.0117”です。
これは土佐藩京都藩邸史料の1つで、土佐勤王党員であった岡田以蔵の「科書」の写しです。
人斬り以蔵としても知られる彼の名前からも、この史料の価値の高さが伺えますよね。
ですが実はこの史料からは、所謂目玉ともいうべき情報以外にも価値のある様々な情報が読み取れます。
それこそが、こういった古文書史料の面白みの1つでもあるのです。
今回はこの「科書」から得られる情報を一つ一つ拾い上げて紹介し、史料の魅力をお伝えしましょう。
偉人・坂本龍馬の功績や、彼の生きた時代にまつわる資料がたくさん
今回ご紹介の岡田以蔵の「科書」も、常設展示室にて鑑賞することができます
元治元年5月にあたる「子(ね)五月」に書かれた「科書」。
「科(とが)」とは罪を意味し、それを書き記したもの、すなわち「科書」は罪状を意味します。
この罪状が誰のものであったのか、それは「科書」の斜め左下に書かれた「無宿鉄蔵」という文字からうかがい知れます。
「鉄蔵」は岡田以蔵のことであり、以蔵は文久3(1863)年八月十八日の政変以降、藩からの弾圧対象となった土佐勤王党から離れて京都に留まり、自らを「鉄蔵」と称していました。
ちなみに、「無宿」というのは江戸時代における身分の一種、無宿人のことであり、人々は様々な理由から無宿人になります。
以蔵の場合は、罪を犯した当時に脱藩者であったことから無宿者として処されています。
では、以蔵は当時、一体どのような罪を犯したのでしょうか。
「写」とは、奉行所の役人が書いたものを京都藩邸の役人が写した、という意
岡田以蔵は天保9年生まれ。天保6年生まれの龍馬と同じ時代を生きた剣客でした
当時27歳という若さ…京で捕らえられた岡田以蔵の犯した罪とは?
「右者(は)」で始まる文章を見ると、「二条東洞院西入」で「糸商売」をしていた「幸次郎」の店へ押し入り、「金子(きんす)」を「押借」、すなわちお金を無理やり借りようとした、と問責されています。
二条東洞院西入(にじょうひがしのとういんにしいる)は、京都の横筋・二条通と縦筋・東洞院通の交差点を西に入った場所。
現在の中京区仁王門町に当たり、京都を囲む御土居の内側に位置することから、洛中で起こった事件であることも分かります。
この洛中という事件現場が意外にも大事であり、これによって事件担当所轄が決定するのです。
事件が起きた元治元年の洛中の事件は京都町奉行の管轄となっており、したがって今回は同所が担当しました。
最後の二行で、事件の担当者は京都町奉行の小栗下総守の組のうち同心の斎藤安太郎であると分かります。
京都町奉行は東西に分かれて月番(つきばん)交代で任務に当たっており、小栗下総守は東町奉行だったため、元治元年5月は東町奉行が月番だったこともわかりますね。
手紙や書類などの展示品にはわかりやすく現代の文字に直したキャプションも併設
ぜひ展示の隅から隅まで堪能してください。思わぬ歴史の名品に出会えるかも?
「科書」に書かれた通り、商家でお金を無理やり借りようとする罪を犯した以蔵。
続いてはそんな彼が、実際にどんな量刑に処されたか見ていきましょう。
「科書」の左隣に、「焼印之上洛中洛外追放払」と書かれています。
これは焼印を押したうえで洛中洛外から追放するという意味なのですが、罪人は基本的に体に焼印(烙印)が押され(入れ墨の場合もあります)、様々な刑に処されます。
以蔵はそのうち追放刑に処されており、洛中洛外から追放、すなわち京への立ち入りが禁止となりました。
この時以蔵は、「二十七歳」でした。
京を追放後、土佐藩で処刑された岡田以蔵の墓(高知市薊野)。墓石には「岡田宜振」とあります
以蔵と深くかかわりのあった武市半平太とその妻の墓。高知市仁井田にて
最後に、京都町奉行配下が作成した「科書」が土佐藩京都藩邸史料として見つかったことそのものにも、非常に大きな意味があることについて触れておきましょう。
これはつまり京都所司代や京都町奉行ら在京の幕府役人が、土佐藩などの外様藩の役人と日々関わりがあった可能性を示唆しています。
立場や所属が違えども交流があったことで、きっと当時様々な情報の共有が行われていたり、中にはもしかしたら垣根を越えたプライベートでの付き合いをする人々もいたのかもしれません。
このように一つの史料には内実あふれる様々な情報が詰まっています。
それこそが長年積み重なってきた人の営みの証拠として、歴史にロマンを感じさせるポイントでもあるのですね。
■ 高知県立坂本龍馬記念館
開催時間/9:00~17:00(最終入館は16:30)、定休日なし
開催住所/高知県高知市浦戸城山830
駐車場/あり 普通40台・障害者用2台バス4台
料金/企画展期間700円、展示替期間500円、高校生以下無料
お問い合わせ/ 高知県立坂本龍馬記念館(088-841-0001)
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