【別子飴本舗】 日本一アグレッシブな老舗! 愛され続ける商品を生み出す秘訣とは!? 【愛媛/新居浜市】

  

別子飴本舗の本気がつまった商品とその軌跡

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創業から156年の歴史をもつ愛媛県新居浜市にある老舗菓子店「別子飴本舗」。
店舗の由来でもある別子飴といえば、古くから地元で愛されてきたお菓子です。
江戸元禄の頃から開山した別子銅山のの功績を讃えて、製作されました。

その後、ANAの機内販売品にも選定された「ポリポーリ」や、第7回ニッポン全国ご当地おやつランキングで準グランプリを受賞した「生ようかん」、カレーパングランプリで3年連続金賞を受賞した「本気のカレーパン(現カリットカリー)」など。

地元の新居浜を中心に、東京や全国にその名前を轟かせていきます。

どうして、ここまで新しいものを生み出せる力があるのか!?
今回は、愛媛一? いや日本一アグレッシブと言っても過言ではない「別子飴本舗」に迫りたいと思います!

成長し続けていくために! あくなき探究心で追い求める!

今回お話をお聞きしたのは、専務取締役である越智靖夫(おちやすお)さん。
現当主7代目の越智秀司さんのご子息で、愛媛県松山で育ち。
25歳まで大阪で美容師をされていました。

――全然違った職業をされていたのですね! 家業を継ごうと思ったきっかけは何ですか?

「美容師はすごくやり甲斐がありました。 でも、25歳の頃に独立するか悩んでいたんです。 そんな時、あるパティシエの方のYouTubeを見て、お菓子作りっていいなぁとぼんやりと思いました。」

――お菓子…と言いますと別子飴本舗さんと同じですね!

「そうですね! でも、当時は和菓子というより、洋菓子に興味がありました。 なので、これを機会に、美容師をやめて、26歳の頃、思い切ってパティシエの学校に通い始めたんです。」

――え!? 決断力がすごく速い!(笑)

「思い立ったらやってみよう! と思いました(笑)」

しかし、この靖夫さんの思い切りが別子飴本舗の今にもつながっています。

学校を卒業し、新浜市に戻ってきた靖夫さんは、さっそく、生キャラメルと羊羹を組み合わせたお菓子や、和チーズケーキなど、洋と和を掛け合わせたお菓子の開発に携わりました。

「飴は長く扱ってもらえるけれど、なかなか買ってもらいにくい。 別子飴という伝統と歴史は守りながらも、新しいものにチャレンジしていかなくてはいけないと思いました。」

あとで詳しく紹介する今回の新商品ヌガーグラッセサンド「アカガネ」も、南フランス発祥の伝統的な洋菓子をアレンジしたものだそうです。
靖夫さん曰く、ヌガー作りは、飴作りに共通したものがあるのだと教えていただきました。

美容師から始まり、心の赴くままに真っ直ぐに駆け抜ける靖夫さん。

それは、大正13年に、満州で一旗揚げようとわたり、関東軍に飴やお菓子を納めながら、乳化製品の技術を学んで「別子飴」を開発した4代目の当主、越智慎一さんの精神のよう。

あくなき探究心と挑戦し続ける心、別子飴本舗の粘り強い力と歴史を感じました。

別子飴本舗の今を繋いだ商品!

定番の別子飴からスナック、食卓に並ぶカレーパン、和洋スイーツなど、バラエティに富んだ別子飴本舗の商品の数々!
その品揃えの多さに、お店に行くとあれもいいな! これもいいな! とたくさん買いたくなります。

そんな、数ある魅力的な商品の中から、今回は、2つの商品にまつわるストーリーをご紹介したいと思います。
まず、ポリポリという食感がやみつきになってしまうスナック「ポリポーリ」。

使われている素材は、新居浜市のお隣にある四国中央市の名産品の里芋。
その中でも、オリジナル開発されたブランド「伊予美人」を使用しています。

白くて細やかな肉質は、まさにべっぴんさん! 石鎚山系の豊かな水と瀬戸内海の気候をいかして、農家さんが愛情込めて育てています。

「実は、里芋農家さんから、伊予美人の親芋の部分が硬くて捨てられているというお話を聞きました。 そこで、この親芋を使って何か作れないかなと考えたんです。」

――まさに今世界でも注目されているアップサイクルというやつですね!

「そうですね! 当時は、そこまで世界的な動きはまだなかったですが、とにかく目の前の食材を使って、美味しいものが作られたら、付加価値が付くし、生産者の方も喜んでくれると思って取り組み始めました。」

しかし、開発は簡単な道ではありませんでした。
本来捨てられている素材である親芋。

当時は確保も大変だった時期があったそうです。
難関だったのは、ポリポーリの最大の特徴でもある食感と硬さ。

「好みの「硬さ」には個人差があるので、何度も研究し、いろんな所でアンケート調査をして、調節していきました。 実は、ポリポーリは多くの人が好む硬さより、ほんの少しだけ硬くしています。」

さらに、愛媛県弓削島周辺で採れる藻塩を使用し、米油で丁寧に揚げて、使用する材料までこだわり、日持ちもする商品を作り上げました。

食感、パッケージングに至るまで絶妙な調整を繰り返して、出来上がったポリポーリは、地元新居浜や愛媛県内で販売を開始します。

その後、ANAの国際線機内販売にも採用され、その市場は、東京にも広がりました。
「その縁もあってか、東京オリンピックで東京限定のポリポーリ「もんじゃ焼き味」を売り出そうという話もいただきました。」

――ポリポーリは、着実に安定、拡大していってますね!

「…その予定だったんです。」

――予定?

「実は、大型フライヤーも購入し、商品も完成して、後は東京の駅や空港に卸すだけだった頃、コロナがやってきました。 それでその話がすべて無くなり、さらに、地元の観光も大きな影響を受けて、別子飴もポリポーリも置いてもらえなかったり、売れないという未曾有の事態になってしまったんです。」

――そのお話がなくなるだけでなく、地元の市場でも売れ行きが…!?

売れ残る商品、先の見えない将来。
しかし、この大ピンチが、別子飴本舗のさらなる可能性を引き出すことになります!
お次は、そんなピンチをチャンスに変えていった別子飴本舗の商品に迫りたいと思います。

ピンチを最大のチャンスに! 情熱から生まれたヒット商品!

「ということで、私たちは、カレーパンを作りました。」

…ここが吉本の会場ならば、なんでやねん! っと、ずっこけるような仕草をしてしまっていたと思います。
コロナという未曾有の危機に立ち向かうため、本気の別子飴本舗が編み出したのは、飴でもお菓子でもなく、まさかのカレーパンでした。

しかし、一見異色に見えるカレーパンのお話。
よく聞いてみると、別子飴本舗さんだからこそできたのだと思うことが非常に多い理にかなった商品だと感じました。

「まず、導入したばかりの大型フライヤーの使い道を考えました。 かき揚げや、コロッケなど色々と試してみた結果、一番美味しかったのが、カレーパンだったんです。」

別子飴本舗の工場長さんは、パン職人をされていた経歴もあったそう。
さらに、元々経営していた「手打ちうどん長兵衛」の和風カレーがベースにあったので、それを活かせる強みもありました。

しかし、お菓子作りのノウハウとはまた違った部分も多々あります。
形や、中身の具材、価格など、何度も試行錯誤を重ねて、第一弾「本気のカレーパン」を世に出すことができたそうです。

「本気のカレーパンは、その名前の通り老舗の本気を詰め込んだカレーパンです(笑)」

その後、カレーパングランプリで見事金賞を勝ち取ります。
さらに、3年連続金賞も獲得し、全国のTV番組でも取り上げられ、一躍有名になりました。

また、ドライブスルーやマルシェを活用し、コロナ禍でも手にとってもらえるように、いろんな所へ赴いて販売されたそうです。

2022年には、名称を「カリットカリー」に変更、カレーパンの冷凍化も成功させ、本格的に全国に向けて販売を開始しました。

「マルシェに参加したり呼んでもらえたりすることで繋がりも増えて、僕たちの可能性も広がりました。」

伝統を大切に守りながらも、時代とともに変化していく別子飴本舗。
様々なものを世に出していく裏側には、厳しい時代の中で必死にくらいつき、お店を守り抜いていこうと戦った歴史がありました。

新商品アカガネと、別子飴本舗のこれから

さて、上記で少しご紹介した「アカガネ」。
クラウドファンディングでも先行予約を受け付けていた別子飴本舗の新商品です。

昔ながらのミルク飴づくりの製法をいかして、フレンチの王道デザートのヌガーグラッセをアレンジして、本気で作り上げています。

一口食べると、おもしろい新食感が広がり、芳醇な味わいに虜になってしまう。
まさに五感で楽しめる大人なスイーツです。

「ヌガーは、キャラメルやソフトキャンディによく似たお菓⼦です。 別⼦飴づくりの技術とヌガーづくり、また、以前に作っていた⽣キャラメルとキャラメリーゼの作業⼯程などがリンクしており、シンパシーを感じました。」

サクッと口当たりのいいクッキーはもちろん、丁寧にキャラメリーゼされたナッツのザクザク感や栗のゴロッと感、贅沢でリッチなアイスにスパイスがきいた味わいは、まさに唯一無二。

自分へのご褒美や大切な人へのプレゼントなど、たくさんのシーンで活躍できる商品だと思いました。

また、パッケージにもこだわりが詰まっていて、名前の由来であるAKAGANE(⾚銅)をイメージしたルビーの深い輝きは、紳士的でクール。
洗練されたデザインにはえもいわれぬ特別感が漂います。

そんな別子飴本舗の職人たちが試行錯誤して、本気で作り上げたヌガーグラッセ! ぜひ、一度ご賞味あれ!

「あと、今とても面白いものを開発中なんです!」

ヌガーグラッセに驚いていると、靖夫さんがブランディング中のある商品のデザインを見せてくれました。
それは、カラフルでポップな別子飴のパッケージ案です。

「これは、ベッシーと言います。 今は、海外向けの別子飴の制作に取り掛かっています。」

―全国ときたら次の市場は海外ですか…!

「もちろんレトロな別子飴のパッケージも大切にしていきますが、今取り組んでいるベッシーは、海外の方が手にとった時、どんな味なのか、何が入っているのか、一目でわかるようにしたいと思いました。」

イメージとしては、ドンキホーテに置いてもらえるような商品だそう!
日夜ドンキに通っては、パッケージやサイズの研究などもされているそうです。

どこまでも研究熱心な靖夫さん。
その向上心の裏には、ただ闇雲に商品を生み出すのはなく、生み出した商品は必ず結果を残したい! 育てていきたい! という我が子のように深く愛する気持ちがありました。

「カリットカリーを独立させてもいいのでは? というアドバイスもいただくことはあるのですが、やはり別子飴本舗があのコロナの時代に生み出した商品だという歴史と、別子飴本舗だからこそできたという誇りもあります。 これからも別子飴本舗で商品を作り続けて守っていきたいと思っています。」

老舗の意地と商品を愛する心意気があふれている別子飴本舗。
心に残る商品がヒットし続ける理由は、時代のニーズを探り、昔ながらの手作りにこだわっているからだと思いました。

革新と伝統が共存している別子飴本舗の魅力的すぎる商品たち!
ぜひ、その目と舌で味わいに行ってみてください。

  • ■ 別子飴本舗
  • 住所/愛媛県新居浜市郷2丁目6−5
  • TEL/0897-45-1080
  • 営業時間/9:00〜17:00
  • 定休日/カレーパン販売のみ木曜休み
  • 禁煙·喫煙/禁煙
  • クレジットカード/あり
  • 電子マネー·その他/あり
  • 駐車場/あり

別子飴本舗 公式HPはこちら
別子飴本舗 公式Instagramはこちら

reported by 柴原おかめ
ひめトレイル