離島・愛媛県上島町のパン屋さん「Kitchen 313 Kamiyuge」で町の魅力を再発見

  

県内外、国内外からの移住者も多いこの町の人を惹き付ける秘密とは?

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皆さんは、愛媛県の上島町という場所をご存知ですか?
瀬戸内海に浮かぶ25の離島からなる町、上島町。

四国本島に住む愛媛の人々の中には、この町の存在を知らなかった。
あるいは広島県だと思っていた、なんて誤解を持つ方も多いのかもしれません。

しかしこの町は愛媛に住む私達でも知らないような、素敵な魅力が沢山詰まっています。

季節の移ろいを感じさせる穏やかな海風と、優しく暖かな太陽の光。
どこか懐かしい郷愁的な風景の中で、ゆったりとした時間が流れゆくこの町。

しかし上島町の最も大きな魅力は、何よりもこの島々に住む素敵な人々なのです。

今回はこの町で人気のパン屋さん「Kitchen 313 Kamiyuge」を営む、宮畑真紀さんの人となりを紐解きながら、この町の「人の魅力」を紹介していきたいと思います。

松山市中心街から車で約2時間!道中も景色を楽しめる上島町への旅

上島町へ向かうには、まず車で松山から今治へ下道を約1時間。
その後今治ICからしまなみ海道を通り、因島南ICで高速を降ります。

サイクリングでも人気のしまなみ海道は、皆さんご存知の通り瀬戸内の穏やかな海の景色を堪能できる絶好のルート。
高速を走る車の中からも、絶景を楽しむことはもちろん可能です。

因島南ICを降りて車で南下すること約15分。
島にある土生港から、上島町行きの定期船に乗りこみます。

船に5分ほど揺られると、上島町を構成する島の1つである生名島の立石港に到着です。

上島町の主要な島となっているのは生名島、弓削島、そして岩城島。
このうち生名島と弓削島は、陸橋で往来ができるようになっています。

岩城島は現在船で往来をしていますが、2022年3月に生名島と岩城島の間に岩城橋が完成予定とのこと。
それにより、ますます上島町内の往来が便利になるそうですよ。

生名島に上陸した後、弓削島へ向かうこと約10分で「Kitchen 313 Kamiyuge」に到着します。

こちらは住宅街の路地裏へ入った場所にひっそり佇む、隠れ家のようなお店。
一見するとかなり分かり辛い場所ですが、ここには島内外や町内外、中には県外から足繁く通う方がいる特別な場所なのです。

私たちが訪れたこの日も、店内にはすでに2組のお客様が。
10分と空けずお客様が訪れる忙しい日ではあったものの、合間を縫って店主の宮畑真紀さんは私たちに様々なお話を聞かせて下さいました。

上島町・弓削島のパン屋さん「Kitchen 313 Kamiyuge」が生まれるまで

店主の宮畑真紀さんが、「Kitchen 313 Kamiyuge」をオープンさせたのは2014年のこと。
元々真紀さんご自身は、都会・神戸の街で生まれ育ったんだそう。

時間の流れが穏やかな自然あふれる場所で暮らしたい、というご結婚された旦那さんの思い。
そして子どもに親の生きる姿をリアルに見てもらう為、職と住環境を同じ場所にしたい、というご夫婦の思い。

そんな思いから、真紀さんのお父様の生家がある上島町にやってきたのは10年前のこと。
建築業界の編集業に携わる旦那さんとお子さん3人、そしてペットの猫たちと一緒に、家族みんなで移り住んだそうです。

そうやってこの町の生活にも慣れたある日。
この島の友人との会話が、真紀さんが店を始めるきっかけでした。
その内容とは、「この島にはパン屋さんがない。美味しいパンを食べたい」というもの。

それを聞いた真紀さんが「じゃあ私がやってみよう!」と思ったのが「Kitchen 313 Kamiyuge」の始まりだったと言います。

「Kitchen 313 Kamiyuge」が大勢のお客さんに愛される理由とは?

この「Kitchen 313 Kamiyuge」が多くの人に愛されるポイントは3つあります。
まず1つ目はやはり、このお店で販売されるパンやベーグルでしょう。
驚くべきことに、パン造りは全て独学で試行錯誤しながら学んだという真紀さん。

彼女が作るパンはこの日も瞬く間に売れてゆき、平日にも関わらず14時頃には全て完売となってしまいました。

ここで作っているパンには、大きく2つのこだわりがあると真紀さんは語ります。

まず1つは、全て真紀さん1人の手作業のみで作っている「手しごと」という点。
パンを捏ねたり、成形したり、発酵させる過程。
これら全て機械を使わず、自然の環境と自身の手しごとのみで行っています。

そしてもう1つは、なるべく地元の食材を使う、という点。

何事においても、インスピレーションや今この瞬間のひらめきを大事にしたい、と真紀さん。
その言葉通り、店内には上島町や弓削島で採れた食材や、旬の食材を使用したパンもたくさんです。

この日並んでいたのは、無花果や安納芋、栗の渋皮煮、秋茄子など使用したパンやベーグル、焼き菓子。
時にはパン作りにぜひ使って、と採れたての食材をお裾分けして下さる方もいます。

お客様と真紀さんが、そんな季節の食材について会話をするのんびりした一幕も。

秋の味覚を美味しく食べるためのお話に、しばし私も横で耳を傾けさせてもらいました。
パンを購入しに来たお客様との、ゆったりとしたお喋りの時間。
「これも私にとってすごく大切な時間なのです」と真紀さんは穏やかな笑顔で語ります。

築100年超の蔵をリノベーション!風格ある古民家の店構えも人気

「Kitchen 313 Kamiyuge」が愛される2つ目のポイントは、非常に趣のある店構えです。

このお店の建物は真紀さんのお父様の所有物であった、築100年超の蔵を改造したもの。
登録有形文化財にも指定された建築物を、真紀さん自身の手しごとでリノベーションしたそうです。

そのため、お店と真紀さんご家族が住む母屋は建物が隣り合っている状態。
ここに移り住んだ際大工さんと一緒に、自分達で母屋も完成させました。

自分が携わるもの作りは、どんな形でも自分の手しごとで行いたい。
そんな真紀さんのこだわりが、こんなところにも表れています。

母屋と繋がる雰囲気のある中庭では、座って暖かな日差しの中で購入したパンを食べながらのんびり過ごすこともできます。
運が良ければ店の看板娘である、人懐っこい猫のココちゃんにも出会えるかも。

県内外から会いに来られるお客さんも多数!店主・宮畑真紀さんの魅力

そしてこのお店の最後の魅力は、やはり店頭に立つ真紀さんにありました。

彼女が毎日1人で切り盛りするこのパン屋さん。
当然人がひっきりなしに訪れる日もあれば、この日のように時にはパンが早い時間に売り切れる日もある様子。

それでも彼女は機械を導入して、利益のために効率良くパンを売る店には絶対したくない。
そう強い意志を込めて、私たちに日々お店に立つ想いを語ってくれました。

真紀さんにとって、パンやベーグルを販売する、ということ。
それは人と繋がるために、自分ができることの1つに過ぎない…と彼女は語ります。

この島に暮らす人々やお店に訪れる大勢の方と、直接自分の手や言葉で交流をすること。
そして販売するパンも、パンを売る店も、自分達の暮らす家も。
全て自分の手を掛けて、手しごとで作り上げる。

それにこだわるのは、私は「今ここに生きている自分」を何らかの形で残したいから。
そう真紀さんは、私たちに話してくれました。

思いの原動力となっているのは、学生時代に神戸で被災した阪神大震災の出来事。
旦那さんも同じく神戸で生まれ育ったため、お2人共ダイレクトに震災を経験されました。

震災で当時のお家や、同級生、友人も喪った真紀さん。
その経験が、「自分の生きた証を残したい」という思いに繋がっているそうです。

真紀さんにとってのパン作りは「自分の生きた証を残す」手しごと

様々なものを自らの手しごとで作り、自分の生きた証を残したい。

そうして丹精込めて作ったパンで多くの人と心を通わせながら、この魅力的な町で暮らしたい。
真紀さんは、優しい笑顔で静かに語ります。

海と山に囲まれた上島町では、生活の中で四季の香りや大自然の空気感の変化を楽しめる。
一見同じに見える山々の景色や目の前に広がる瀬戸内の海。

これも時間や季節、天気によって色彩が変わり、同じ表情は二度と見れないんです。
そう真紀さんは上島町ならではの季節の移り変わりを教えてくれました。

店から海沿いの道を少し北上した所にある高濱八幡神社。
真紀さんのお勧めは、購入したパンを神社前の浜辺で海を眺めながら食べること!

海の青色も、太陽の光や気温、温度によって様々な表情を見せてくれるそう。
ぜひ上島町、弓削島に訪れた際は「Kitchen 313 Kamiyuge」のパンを片手に、波の音に耳を傾けながら海を楽しんでみて下さい。

さらにこの高濱八幡神社をもう少し北上すると、SNSなどで写真映えするようなこんなスポットも!
こちらは瀬戸内かみじまアートプロジェクト2019によって設置された、防波堤ペインティングとなっています。

上島町内3箇所に設置されている、こちらのペインティング作品。

ここではその1つである、画家の日月美輪氏による作品「天の花」を鑑賞する事が可能です。
高濱八幡神社まで来た際は、少しだけ足を伸ばして一緒に訪問してみるといいかもしれません。

「かみじまエール」を利用して町で使える商品券2000円をゲット!

現在、上島町では町の飲食店を応援する「かみじまエール」という企画も開催中。
この企画は飲食店を利用してスタンプを集め、上島町で使える商品券と交換しよう!という内容です。

参画店舗は、今回ご紹介した「Kitchen 313 Kamiyuge」を始めとした町内の飲食店全店!
瀬戸内海で獲れたての海鮮や、「レモンの島」として有名な岩城島のレモンを使ったメニューが楽しめるお店など。

様々な上島町の食が楽しめる、素敵な企画となっています。
詳細はぜひ、こちらのサイトをチェックしてみて下さいね。
瀬戸内かみじまトリップ・飲食店応援「かみじまエール」はこちら

まだまだコロナ禍の余波が衰えぬ中、都会や人の集まる施設に行くのはちょっと怖い…。
そんな方はぜひ、このノスタルジックな街並みで私達を癒してくれる上島町へ足を運んでみませんか?

この町でしか見られない、四季折々の美しい景色。
そしてここだからこそ出会える、様々な人々。

それがもしかしたら、あなたの人生を変えてくれるきっかけになるかもしれませんよ。

■ 上島町商工観光課
住所:愛媛県上島町弓削下弓削1037番地2
TEL:0897-77-2252
瀬戸内かみじまトリップはこちら

■ Kitchen 313 Kamiyuge
住所:愛媛県越智郡上島町弓削上弓削313番地
TEL:0897-72-9075
Kitchen 313 Kamiyuge 公式HPはこちら

reported by イマナニ編集部 曽我美なつめ
イマナニ特集