四国遍路のススメ
せっかく四国にいるのなら、お遍路に出かけてみよう!
そもそも四国遍路って?
「四国遍路」とは、は弘法大使(空海)ゆかりの八十八ヶ所の寺院を巡礼することです。
弘法大師は774年に讃岐(香川県)に生まれ、あらゆる地で仏道の修行を積みました。
古来より修行の場であった四国へもたびたび訪れ、八十八ヶ所の霊場を開いたといわれています。
その地を巡るのが四国遍路です。
起源や「八十八」という数の由来には諸説ありますが、その歴史は1,200年以上。
かつては信仰や修行のためでしたが、現代では願掛けや健康のため、人生の節目の記念など、様々な目的で多くの人が巡っています。
体験してみたいけれど、色々と決まり事があったり、難しかったりするのでは…。
そんな心配を解消できるように、今回は四国遍路のことを易しく詳しくご案内しましょう。
お遍路用語の基礎知識
四国遍路は「四国八十八ヶ所」「お遍路さん」などとも呼ばれます。
お遍路をする人を指して「お遍路さん」ということもありますね。
このように言葉ひとつとっても、遍路用語とでもいうべきものがありそうです。
言葉の意味を辿りながら、お遍路について理解を深めてみましょう。
■札所(ふだしょ)
八十八ヶ所のそれぞれの寺院のことを札所とよびます。
お札(ふだ)を収めたり受け取ったりするところ、という意味です。
札所には順に番号がふられていて、1番が徳島県の霊山寺(りょうざんじ)、高知県、愛媛県へと続き、88番が香川県の「大窪寺(おおくぼじ)」。「第88番札所 大窪寺」といった呼び方をされます。
4県の札所の数は、徳島23ヶ所、高知16ヶ所、愛媛26ヶ所、香川23ヶ所です。
「霊場(れいじょう)という言葉も耳にすると思いますが、こちらはその寺院がある「土地」のことを指し、神聖な信仰の地という意味です。
■打つ
お参りすることを「打つ」といいます。
かつては参拝した際に木のお札を柱に打ち付けていたことが語源だそうです。
札所の1番から番号順に打つことを「順打ち」、88番から逆回りすることを「逆打ち」といいます。
逆打ちは1回で順打ち3回分のご利益があるといわれますが、理由は諸説あるそうです。
逆打ちのほうが、今もどこかを順打ちで巡っているとされる弘法大師に会いやすいからという説も。
88ヶ所すべてを一遍に打ち上げる「通し打ち」、数ヶ所ずつ分けて巡る「区切り打ち」などもあります。
ちなみに一つの県を一国とみなして巡ることを「一国参り」といいます。
他にも、前の札所から来た道を通らず、境内から別の道へ出て次の札所へ向かう「打ちぬけ」、通ってきた道を戻る「打ち戻り」、予定のコースの最後の札所にお札を収める「打ち納め」、一日の終わりの「打ち留め」もありますよ。
言葉の数だけ、巡り方があるということですね。
交通手段も、歩き、自転車、車、バスツアーなども様々。自分の体力や日程などに適した手段で、無理をしないように回りましょう。
■発願(ほつがん)、満願(まんがん)、結願(けちがん)
遍路に出ようと心を決めることを「発願」、最初の札所を「発願寺」といいます。
すべてを巡り終えることを「結願」、最後の札所が「結願寺」。
どの札所からスタートしてもいいので、それぞれの人にとっての「発願寺」「結願寺」があるわけです。
「満願」は「結願」と同じ意味でも使われますが、すべてを巡り終えた後、高野山への「お礼参り」(※)を終えて「満願」となるという考え方もあるようです。
(※和歌山県にある弘法大師が開いた高野山金剛峰寺「奥の院」へお参りし、大師様へ結願の報告と挨拶をすること)
お遍路さんの必須アイテム
続いて服装と持ち物をチェックしながら、それらの意味も学びましょう。
お遍路さんといえば白装束に笠というスタイルを想像します。
これはいわゆる「正装」で、完璧に揃えなければならないということはありません。
ただ、車で行く場合でも境内や参道が山道や石段という札所がありますので、動きやすい服装、はきなれた歩きやすい靴がおすすめです。
■白衣(びゃくえ・はくえ)
お遍路の正装ともされる装いで、俗世を離れ心の浄化を象徴する白い装束です。
背中には「南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)」と書かれていて、弘法大師への帰依を意味し、道を行くお遍路さん同士が挨拶として唱える言葉でもあるそうです。
袖付きのものと、袖のないものとがあります。
■菅笠(すげがさ)
菅笠には「同行二人(どうぎょうににん)」と書かれています。
読み方が独特ですが、いつも弘法大師と一緒にいるという意味です。
お遍路の道中は大師様のご加護を受けながら歩むということを表現しています。
日よけ、雨除けのための笠ですが、参拝時や僧侶の前でも被ったままでよいそうです。菅笠以外の帽子は脱ぎましょう。
■金剛杖(こんごうづえ)
杖はとても大切なもので、弘法大師の分身とされています。
上部は五輪の塔を模した形になっていて、直接触れないように金襴(きんらん:金糸などを織り込んだ織物)が巻かれています。
宿についたらまず先の汚れを落として床の間など上座に立てかけておきましょう。
杖は橋の上ではついてはいけません。
これは弘法大師が橋の下で野宿をしたことに由来し、その眠りを妨げないためだそうです。
■輪袈裟(わげさ)
僧侶が着ている袈裟を簡略化した正装具で、イラストの首にかけている紫色のもの。
食事やお手洗いの際には外すのがマナーです。
■数珠(じゅず)・念珠(ねんじゅ)
数珠も輪袈裟と同じく食事のときなどには手から外しましょう。
参拝の際には手にかけて合掌を。
■納札(おさめふだ)
自分の名前や住所、参拝日などを書き、本堂と大師堂へ納めるお札。
名刺代わりに、出会った人やお世話になった人へ渡す役割もあるそうです。
■頭陀袋(ずだぶくろ)・山谷袋(さんやぶくろ)
頭陀袋は数珠や納札、線香やロウソクなど必要なものを入れて持ち歩くためのバッグです。
肩から掛けられて両手が使える袋は必需品といってもよいかも。
リュックタイプのものもあるそうですよ。もちろん手持ちの鞄でも問題ありません。
■持鈴(じれい)
腰につけたベルのような鈴は、上級者向けアイテムです。
鈴の音で煩悩を払い心を清浄にするもので、読経の際に節ごとに振り鳴らします。
たくさんの小物も登場しましたが、行った先々の売店などでも購入できます。
それほど神経質に予め揃えなくても大丈夫。
巡り方、お参りの仕方
参拝の作法も気になるところ。
代表的な作法・手順例をご紹介します。
詳細はお寺によって違っていることがありますので、それぞれの場所で確認してくださいね。
●一礼:山門の前で手を合わせ一礼
●清める:手水鉢で手と口を清めます。
ひしゃくで左手、右手の順に洗い、次に左手に水を取り口をすすいで。
●鐘:つくのは一人一度。つけないところもありますので、お寺ごとの案内に従いましょう。
近所に民家が多い所では早朝など時間に配慮して。
また、帰りにつくのは演技が悪いとされるのでつかないようにしましょう。
●納札:本堂と大師堂に一枚ずつ、お札を収めます。写経があればそれも。
本堂、大師堂、それぞれで下記のように参拝します。
●灯明、線香:ロウソクに火をつけ、線香をあげます。
ロウソクの火は他のロウソクからもらわないようにしましょう。
他人の「業(ごう)」をもらってしまうとされます。
またロウソクや線香は後の人のために、奥からたてるのがマナー。
●合掌:お賽銭を静かに賽銭箱に入れ(遠くから投げ入れない)、合掌し、読経。
●一礼:入った時と同じように、山門を出る時も合掌、一礼。
参拝の作法も最初は少し戸惑いそうですが、大切なのは「気持ち」です。
お寺にも周囲の人たちにも敬意を持ってお参りすることが第一。
最低限の礼儀とマナーをわきまえて挑みましょう。
いかがですか?難しく考えず、まず近所の札所から訪れてみてはいかがでしょう?
少し足を延ばせば、紅葉や桜など季節ごとの風景が見られたり、その地方の美味しい食巡りもしてみたり、楽しみ方はどんどん広がります。
「イマナニ」サイトでも全札所の情報をアップしているのでぜひチェックして、出かけてみてくださいね。