愛媛県四国中央市「第15回 書道パフォーマンス甲子園」
書道パフォーマンス甲子園で、涙が止まらない
【写真は全て「書道パフォーマンス甲子園実行委員会」提供】
時代の中で変わりゆく文字の姿
大切なのは変わらぬ思い
心を込めた貴方の言葉は
胸に刻まれ残り続ける
「言魂(ことだま)ニ愛ヲ宿セ」
我等は言葉と共に生きる
これは、2021年7月25日、愛媛県四国中央市で開催された「第14回書道パフォーマンス甲子園」で、2019年に続き連覇した松本市の松本蟻ケ崎高校書道部の作品です。
(2020年は大会中止)
「心ない言葉が飛び交う今の時代、どんな形の文字でも、心を込めて伝えてほしい」という願いが込められたこの作品からは、明朝体を用いるなど、毛筆表現の枠を超えたチャレンジ精神や、彼女たち自身が自分を超えようとする強いエネルギーが伝わってきます。
大会の事務局を担う四国中央市役所 文化・スポーツ振興課 書道パフォーマンス甲子園振興室の守屋伸康室長は、「毎年、高校生のメッセージが胸に突き刺さり、自分は大会の運営を精一杯やれているのか?参加者のためにこれ以上できることはないのか?と、問われているようです」とおっしゃいます。
守屋さんは、毎年、準備期間から本番まで、気持ちが溢れ出して泣いてしまうそうです。
泣いてしまうのは守屋さんだけではありません、主役である高校生たちはもちろんのこと、大会関係者や観客の多くが涙する「書道パフォーマンス甲子園」。
その魅力をたっぷりご紹介したいと思います。
45秒でわかる、「書道パフォーマンス甲子園」公式動画
「書道パフォーマンス甲子園」を全く知らない方は、まずこの45秒間の公式動画(ショートバージョン)をご覧ください。
大会の雰囲気を感じ取っていただけましたでしょうか。
45秒では物足りなかった方には、4分バージョンや
舞台裏に密着取材したこちらの動画もおススメです。
書道パフォーマンス甲子園は、ある人のひらめきからはじまった
「書道パフォーマンス甲子園」は「全国高校書道パフォーマンス選手権大会」の俗称です。
1チーム12名までの高校生が、6分間、音楽に合わせてパフォーマンスを行いながら、縦4メートル×横6メートルの大きな紙に揮毫(毛筆で何か言葉や文章を書くこと)し、その作品とパフォーマンスの総合点で順位を競います。
日本一の紙のまち、愛媛県四国中央市で、毎年夏に開催される一大イベントです。
この大会のきっかけとなったのは、愛媛県立三島高等学校書道部員たちによる「書道パフォーマンス」でした。
地元を盛り上げようと、高校の文化祭や地元のイベントなどで披露しているのを取材した、南海放送制作局制作部の荻山雄一部長(当時、ディレクター)が、「これは町おこしになる!」と、2008年3月に「“書のデモンストレーション”大甲子園」と題する企画を四国中央市に提案し、それが発端となって、7月の「紙まつり」イベント内で「第1回書道パフォーマンス甲子園」が開催されることになったそうです。
このときの出場校は3校。
優勝したのは、地元の愛媛県立三島高等学校でした。
公式ホームページには、大会当初からの優勝校の作品が掲載されています。
「書道パフォーマンス甲子園」の公式サイトはこちら
一昨年は中止、昨年は「19歳の部」も同時開催
第1回目は3校だった参加校も、2010年5月に公開された映画「書道ガールズ!!わたしたちの甲子園」などの影響で知名度も上がり、第14回目となった昨年の大会では、全国102校から申し込みがありました。
本戦には予選を通過した21校が出場し、それとは別に、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となった第13回大会への参加が叶わなかった卒業生のための「19歳の部」で、5校が参加しました。
大会の公式ホームページには、本戦参加校の演技や作品の写真が掲載されていますので、「昨年の大会を見逃した」と言う方はぜひご覧ください。
躍動感あふれる写真は見ごたえ充分です!
昨年の大会の様子はこちら
今年のキャッチコピーは『書道でツナグ “夏の夢”』
今年は7月24日(日)に、第15回目の大会が開催されます。
4月1日から5月13日までの募集期間には、全国31都府県から102校の申し込みがあり、その中から、大会予選審査基準に基づいて予選を通過した20校が本戦に参加します。
本線出場校はこちら
地元四国中央市からも、愛媛県立三島高等学校(2大会連続11回目)と、愛媛県立川之江高等学校(8大会振り3回目)の出場が決まったので、応援にも熱が入ります。
当日は、全国から書道ガールズ&ボーイズたちが「夢の舞台」四国中央市にやって来ます。
日本一の紙のまち、四国中央市
そこで、書道ガールズ&ボーイズたちの聖地でもある、愛媛県四国中央市をご紹介したいと思います。
四国中央市は愛媛県の東の端にあり、香川県・徳島県とは国道続き、高知県とは四国山地を境に接しています。
瀬戸内海と四国山地に挟まれた東西に長い地形で、山から海までの距離が近いので、山から海に向かって眺める景色は最高です。
また、四国の高速道路ジャンクションがあるため、各県の県庁所在地まで、概ね1時間程度で行けるアクセスのよさも魅力です。
産業では「日本一の紙のまち」として、パルプ・紙・紙加工品の製造品出荷額全国一位を誇っています。
もともとは、自生する楮(こうぞ)や豊かな水を背景に、江戸時代から製紙業が盛んになり、和紙製造の機械化などで発展していきました。
現在は約83,000人が暮らしています。
大会で使う大きな用紙や賞状、優勝旗も、四国中央市産
大会で使用する用紙は、地元企業の丸住製紙(株)が大会のために特別に抄造した、幅3.1m、長さ約300m、重さ約200kgのロール紙です。
これを、毎年大会関係者がカットし、貼り合わせて、4メートル×横6メートルの用紙を作ります。
用紙裁断作業の様子はこちら
さらに、注目したいのは、大会の主要なアイテムです。
受賞者に授与される賞状には、大正2年創業「宇田武夫製紙所」(四国中央市金生町)の3代目である宇田秀行さんが漉かれた、手漉き和紙を使用しています。
賞状製紙の様子はこちら
優勝校へと代々引き継がれる優勝旗は、「水引」と呼ばれる、和紙をよって長いこより状にした紐で作られた「水引優勝旗」です。
四国中央市は水引の生産地でもあり、受賞者に送られるメダルや、本戦出場の記念品にも、地元の職人さんが作る水引細工が用いられています。
水引筆ストラップ手作りの様子はこちら
地元の高校生スタッフが大会を盛り上げる!
書道パフォーマンス甲子園は「紙のまち」の特色が存分に生かされた大会ですが、マンパワー、特に「若い力」も大会を支えてくれています。
毎年市内の3校から、約30名の高校生がボランティアスタッフとして大会に携わります。
その活動は、大会前年の12月からスタートし、大会のキャッチコピーを考えたり、デザイナーたちと一緒にグッズを考えたり、参加者を取材して記事にしたり、おもてなしをしたり、全国から集まる高校生たちの輝きを陰で支えている欠かせない存在です。
今年はインターネット中継で「書道パフォーマンス甲子園」を観る!
墨と汗と涙が舞い散る、今年の大会の観覧方法をご案内いたします。
令和4年7月24日(日曜日)13時30分~16時、16時55分~17時25分
南海放送のホームページからインターネット中継で観ることができます。
南海放送HPはこちら
不特定多数の接触を避けるために、会場での一般観覧はできませんが、ダイジェストや学校紹介を交えた放送なので、どんな高校がどんな思いで表現に挑んでいるのかを、リアルタイムで見ることができます。
また、この中継は、当日しこちゅ~ホール(https://shikochuhall.jp/)の大ホールで実施される、パブリックビューイングでも観覧できます。
しこちゅ~ホール(四国中央市市民文化ホール)HPはこちら
これを知っておくと10倍楽しめる!大会の見どころをご紹介
そこで、南海放送の荻山さんに大会の”見どころ”を教えていただきました。
「書道パフォーマンスの見どころは、白紙から作品が描かれるまでの全過程が観れることだと思います」
たしかに、最近は物にしても何にしても、その背後にある「ストーリー」が人々の興味を引きつけます。
物自体の魅力に加え「どういう人が、どういう思いで作ったのか」に真の価値が見出される時代だからこそ、そのストーリーが目の前で繰り出される「書道パフォーマンス」に、多くの人が感動するのかもしれません。
荻山さんはこうもおっしゃっていました「大会ごとに、その時代を反映したテーマが見えてくるんですよね。昨年はコロナでしたが、今年は平和かな」
今を生きる高校生たちは、社会の風を敏感に感じ取り、自分たちの中に取り込んで、ひとつの作品として私たちにそのメッセージを投げかけてくれます。
さらに荻山さんは「高校それぞれにスタイルや特徴があるのも見所です。ひと文字ひと文字の丁寧さが際立つ高校や、所作が美しい高校、アイデアや演出力に優れた高校など、各校が独自のカラーを持っているので、そのカラーに着目しながら観るのも面白いと思いますよ」と教えてくださいました。
大会の公式ホームページには、歴代の本戦参加校の作品が掲載されているので、常連校の作品をチェックしたり、各校の特色を把握しておいたりすると、何倍も楽しめます。
「書道パフォーマンス」の本質的な魅力とは
それでも、そもそも書道パフォーマンスとは「書」を鑑賞するものなのか?「パフォーマンス」を楽しむものなのか?まだよくわからない、という方もいらっしゃるかと思います。
そこで、荻山さんに、「書道パフォーマンス」とは?という質問を投げかけてみました。
「本来”書”とは、己と向き合い、黙々と臨書し、個人で作品の高みを目指すものですが、取材を通して見えてきた書道部の姿は、日々一緒に練習したり、時には合宿したりと、切磋琢磨できる仲間の存在があるからこそ、個の作品のレベルが上がっていく、というものでした。そうした個の作品からは想像しづらい部員同士の絆や、部活動の在り方が、1つの作品として表現されたのが書道パフォーマンスだと思います」
白紙から作品を創り上げる6分間には、1人1人が己と向き合い臨書した時間、仲間と切磋琢磨した時間、鏡に向かってパフォーマンスの練習をした時間、大きな筆を洗っている時間、練習用の新聞紙を何枚も繋ぎ合わせた時間、作品にしたためるメッセージを考えた時間、先輩たちの背中を見続けた時間、うまくいかずに泣いた時間、笑った時間、仲間に助けてもらった時間などが詰まっています。
それは、つまり、「青春」
多くの人がこの大会で涙を流してしまうのは、その「青春」が誰にとってもかけがえのないものだからかもしれません。
その真っ只中で、筆を取り仲間たちと「青春」を謳歌する書道ガールズ&ボーイズの眩しすぎる輝きを、今年はインターネットやパブリックビューイングでぜひお楽しみください!
■ 第15回 書道パフォーマンス甲子園
開催日時:2022年7月24日(日)9:00~17:00
開催場所:伊予三島運動公園体育館
問合先:書道パフォーマンス甲子園実行委員会事務局
TEL:0896-28-6037(平日9:00~17:00)
第15回 書道パフォーマンス甲子園 公式HPはこちら
イマナニで「 第15回 書道パフォーマンス甲子園」の情報を見る