さいさいきて屋の生産者さんシリーズ Vol.9 ~研究・挑戦・機械化。目指すは食を豊かにする農業~

  

星歌子まい    イマナニ体験レポート

1年間で育てたじゃがいもは13品種!

愛媛県今治市の東に位置する、山に囲まれ緑豊かな朝倉。
メイン道路を逸れて進むと、広々とした畑が見えてきました。
到着したのはじゃがいも畑。

いもを掘り起こしながら、稲刈り用のコンバインサイズの機械車が畑の中をぐんぐん進んでいます。
その畑で出迎えてくださったのは、JAおちいまばりのさいさい倶楽部代表である田村寛さんです。

「ご縁があっていい土地を借りられました。この広い1区画の土地を活かしてじゃがいもの生産を行っています。年間3回じゃがいもを植えるんですけどね、ここらでは僕ぐらいのものですよ」と話してくれる田村さん

「今、収穫しているのは“出島(でじま)”。瀬戸内海の気候でも育てやすい品種のじゃがいもです。僕のところでは、例えば2月に種イモを植えて5月から6月にかけて収穫します。じゃがいもにはたくさんの品種がありますけど、出島が瀬戸内海ではつくりやすい上に料理の幅が広く、美味しい」とのこと。

2月に植える種イモから50トン、2回目の9月に植える種イモからは20トン、3回目12月の種イモからは5トンを平均して収穫するそうです。

「新品種も育てたりしているんですよ」と見せてくれたのは大人の手のひら以上に大きなじゃがいも。
「これは“アイマサリ”。比較的つくりやすいし、じゃがいものへその緒みたいなものの“ストロン”が細くて切れやすいし(出島は太くて切れにくい)、収穫もしやすいんですよ。試験的に育ててみましたが見ての通り大きく育つので、これから実食して品質をしっかりとみたいですね」と、2017年に品種登録出願が公表されたと言う新顔のじゃがいも生産についてもお話してくれました。

他にも“メークイン”、“馬鈴薯農林1号”なども育て、なんと「1年間で最高13品種のじゃがいもを育てました」。
行動派かつ研究熱心な田村さんのお人柄がわかります。
1-1
掘ったじゃがいもは日光にさらして緑化しないよう黒い布を掛けておく
掘ったじゃがいもは日光にさらして緑化しないよう黒い布を掛けておく サイズ揃いのアイマサリ ひとつがこれほどに立派なサイズ。アイマサリ じゃがいもの根っこ、ストロンの違いについて話してくれる田村さん 70aほどの広さがあるじゃがいも畑
「僕は46歳までサラリーマンをしていたんですが、実家の農業を継いで農家に転身したんです。“今から始めれば60歳くらいまでにプロを目指せるかも?!”と思って」と田村さんは笑ってお話してくれます。

ご実家は蜜柑農家でしたが、勉強に出向いた浜松で大規模な蜜柑の“機械化農業”を目の当たりにし、蜜柑農業を辞めることにしたそうです。
「浜松で見たJAの選果場は管理が機械化されていて24時間操業なんです。蜜柑の品質や等級選別も機械。人の作業より何倍も効率がよい」ことに衝撃を受け考えさせられたそうです。

ご実家では田村さんのお父さまがじゃがいももつくっていたことから、田村さんは米麦以外の機械化が可能な作物、じゃがいも農家の道を考え始めます。

「じゃがいもを育てるのは考えた方がいい。重たいものを育てるのは本当に大変だよ」とアドバイスをくれた先輩もいました。「そう言いながら、その先輩こそ50年もじゃがいもをつくってた(笑)」と田村さん。

熟考し、露地で自然な状態で栽培できること、一辺が長く広い土地を使って、機械化で効率よく作業できることを念頭に、条件にあう土地探しから始め、じゃがいもの栽培をスタートさせました。
今ではじゃがいもを自動で掘り起こしてくれる収穫機も3台そろえ、4トンのたい肥も1時間で撒き終えてくれる機械効率の良さで作業を進めています。

「失敗だらけだった」と田村さんは言います。
「分からないことは先輩にも若者にもどんな方にも質問します。聞いて尋ねることは苦にならないです。教えてもらったことは自分の身にしていきます」と、田村さんの“上達の極意”も教えてもらいました。
2-1
じゃがいもの収穫風景
じゃがいもの収穫風景 機械が土から自動でじゃがいもを掘り起こしていく ローダーを流れてくる掘りたてのじゃがいもを手作業で仕分けする 獲れたてのじゃがいも。ストロンがほぼ付いていない じゃがいも収穫機の別角度。たくさんのコンテナをバランスよく乗せて走る

やっぱりさいさいきて屋の野菜が一番おいしい!

愛媛でも農業が盛んな今治、さいさい倶楽部の代表を務める田村さんは「今治の野菜の供給量を保つことも日々考えています」。

「旬のものが一番栄養価が高くて美味しい。でも、供給量を保つためにはハウス栽培農法も必要。役割として求められています。今治にももう少しハウスが増えて欲しいと思っています」と今治の食、農業状況についても語ります。

「近年、農業人口が減っており、農家の方の年齢は上がっているんです。新規就農者は少ない状況」だからこそと「野菜は条件が整っていたら、生産効率も売り上げも上げることが出来る」と力説されました。

例えば野菜を育てるには、幅が狭くて縦に長い畑が有利だそうです。
「土地の形状と質、栽培ノウハウ、農業機械、売り先…これらの条件が揃っていたら農業の負担は減らすことができます」。
つまりは年齢が上がったときにも農業を続けやすくまた、新規就農者も失敗のリスクを減らして就農継続しやすいと言うこと。

「僕はやっぱりさいさいきて屋の野菜が一番だと思っています」と田村さん。玉川、蒼社川、頓田川(富田川)の良質の水と水はけのよい土地のおかげで農作物の質が高いそうです。

豊かな食を今治に行き届かせるためにも、田村さんは様々な視点で今治の農業を捉え農家の皆さんとの協力体制をつくっています。
3-1
さいさいきて屋のポップチラシ
さいさいきて屋のポップチラシ さいさいきて屋店内のじゃがいも売り場 手書きの味があるポップチラシ じゃがいも売り場 田村さんのじゃがいも
収穫したじゃがいもは、田村さんが「どんな食材も美味しくしてくれる」と笑顔で紹介してくれた奥さんの恵美子さんが田村家の食卓に並べます。

恵美子さんのじゃがいも料理は“じゃがいもうどん”、“じゃがいもでパスタ”、“麻婆じゃがいも”とアイディア豊富!!

じゃがいもを麺に見立てたパスタ風じゃがいもは、煮崩れしないメークインを使います。
スライサーなどで太目の細切り状(パスタほどの太さ)にカットしたじゃがいもを湯がいて水気をしぼり、お勧めなのは「簡単に温めたパスタソースと和えるだけ!」のお手軽調理。

ご主人の田村さんと一緒に日中も畑仕事に出る恵美子さん。
お昼ごはんや夕飯には手間の少ない調理は大助かりだそうです。

様々な新鮮な獲れたて自家製野菜や旬の野菜で作る料理は、色とりどりに食卓を彩ります。
写真は恵美子さんお手製のお料理の数々です。

“麻婆じゃがいも”を作るときには、手軽に調理できるよう湯がいて冷凍しておいたじゃがいも(メークイン)や時にはさといもなどを解凍して、豆腐替わりに用いるそうです。

皆さんも恵美子さんのアイディアを参考にして、じゃがいもレシピを増やしてみてくださいね!
4-1
大きなアイマサリ
大きなアイマサリ 焼じゃが。田村さん宅ではポン酢で召し上がるそう。美味しそう! じゃがいもパスタ(湯がいて水切りした状態) じゃがいもでクリームパスタ。市販のパスタソースを使うのがお手軽で、恵美子さんのお勧め! 麻婆じゃがいも。豆腐の代わりに茹でたじゃがいもを使用
この度の取材でたくさんのお話をしてくださった田村さん。
常に考え、よいものは取り入れて結果を考察し挑戦し続けていく、そんなバイタリティを大いに感じました。

田村さんは視野を広く、今治の食の質や自給率にも向き合い、さいさい倶楽部代表として熱意をもって今治の農業活性に取り組んでいます。

JAおちいまばりのさいさいきて屋には、想いの込められた生産者さんたちの野菜が今日も並んでいます!
さいさいきて屋
開催時間/9:00~18:00 定休日 1月1日~1月3日
開催場所/さいさいきて屋(愛媛県今治市中寺279-1)
駐車場/あり 230台
問い合わせ先/さいさいきて屋 TEL.0898-33-3131
URL/https://www.ja-ochiima.or.jp/business/saisaikiteya/saisaikiteya/
reported by 星歌子まい