偉人・坂本龍馬の魅力を発信! 『知っちゅうかえ、龍馬?』 Part.13

  

エピソード:ジョン万次郎とゴールドラッシュ

0-0

こんにちは!坂本龍馬記念館です。
当館スタッフが、坂本龍馬記念館のいろんな魅力を発信する本コラム。

今回は「ジョン万次郎とゴールドラッシュ」の話題をご紹介。
私事ですが、先日『ゴールデンカムイ』の映画を観てきました。
期待以上の作品でとても面白かったです!

役者の方々が原作の雰囲気に近く、鑑賞前から注目していた土方歳三役の舘ひろしさんは、特に良かったです。
箱館戦争を生き延び年を取ったものの情熱の炎は消えていない土方、というのが本作の設定ですね。

ところで私はこの『ゴールデンカムイ』を観ると、ジョン万次郎の事がいつも思い浮かびます。
坂本龍馬と同時代に生きた高知の偉人・ジョン万次郎。

彼は仲間4人と漁に出ていて漂流したところを、アメリカ捕鯨船のホイットフィールド船長により救出。
仲間たちはハワイで暮らしますが、万次郎だけが船長の故郷・フェアヘブンへ行きます。

その後、万次郎は日本への帰国資金を稼ぐため、1850年に友人・テリーとゴールドラッシュで賑わうカリフォルニアへ向かうのです。

当館では龍馬と同じ時代を生きた新選組も紹介しています。

海外に漂流したジョン万次郎。その人生は文字通り波瀾万丈なものでした。

カリフォルニアのゴールドラッシュと聞くと、世界中から金を求めて人が集まり、一獲千金を手にする夢のような話に聞こえますよね。
しかしそこは『ゴールデンカムイ』同様、現実は危険な殺戮の場。

金を手にした者がいれば、殺して奪おうとする者もいます。
また人種差別も激しい時代で、先住民族や外国人採掘者に対する圧迫は年々激しくなっていきます。

そのため、万次郎は2丁拳銃を携えてカリフォルニアに乗り込んでいました。
身を守るためには、銃を撃つ覚悟が必要な時代だったのです。

ペリーが日本に来航する3年前のことで、その頃にアメリカでたくましく生き抜いている日本人を想像してみてください。
考えただけでも、なかなか痛快なドラマですね。

ジョン万次郎らを救出したアメリカの捕鯨船ジョン・ハウランド号の図。

万次郎ら漂流者5人を救った船が到着したホノルル・オアフ島港の図。

当時わずか23歳の若さ! 万次郎は一攫千金を求めいざカリフォルニアへ

万次郎は東海岸のフェアヘブン(ニューヨークの北)から船に乗り、チリの南端ホーン岬を回って西海岸のサンフランシスコへ。
パナマ運河が開通する64年前のことで、西海岸へ行くだけでも5~6ケ月を要する大変な時代でした。

サンフランシスコからは「シチン・ボール(スチーム・ボート=蒸気船)」で川を150kmほど遡ってサクラメントに到着し、「レイロー(レイル・ロード=鉄道)」に乗り換えて採掘所へ向かいました。
万次郎はこの直前、捕鯨船に3年半乗って350ドルを稼いでいます。
しかしカリフォルニアで稼いだのは、倍近くの600ドル!

わずか3か月弱でこの金額を稼いだのですから、普通なら欲を出してもう少し、もう少し、と粘りたくなるもの。
しかしこれ以上は危険だと判断し、彼はその後サンフランシスコからハワイへ行く船に飛び乗りました。

万次郎の危険を察知する能力は、何度も死線を潜り抜けた経験から培われていたのでしょう。
当時の彼はまだ23歳。
驚異的な判断力と行動力です。

サンフランシスコから乗船したシチン・ボール号の図。

万次郎が持ち帰った世界地図の写し。
島国を出て世界の広さを知るのです。

レイローの図が描かれた資料。
万次郎にとってアメリカでの体験は未知との遭遇ばかりでした。

今や絶滅危惧種とされるセミクジラの図。
高知は鯨ともなにかと所縁の深い場所です。

晩年の万次郎にも面白い話があります。
明治21(1888)年、万次郎は61歳の時に帆船を手に入れ、小笠原近海へ出かけます。
捕鯨だったのか、別の目的だったのか、明確な記録はありません。

彼はそれまでに脳出血を2度経験しており、長男で医者の東一郎は父・万次郎の身体を心配していました。
しかし東一郎がドイツへ留学し、止める者がいない間になんと彼は出航!
60歳を過ぎた人の行動力ではありませんよね。
海に対する万次郎の情熱の炎は、歳を重ねても消えていなかったのでしょう。

坂本龍馬記念館には、小さいながらもジョン万次郎展示室があります。
万次郎の漂流記である『漂巽紀略』などを展示しています。
これは冊子であるため、残念ながら全文をお見せすることはできません。

彼の人柄やエピソードに興味のある方は、ぜひ講談社学術文庫から出版されている現代語訳の『漂巽紀略』を読んでみてください。
さらに、曾孫で心臓外科医の中濱博著『中濱万次郎』(冨山房インターナショナル発行)などもお薦めです。

ジョン万次郎展示室にある「漂巽紀略」。
ぜひじっくりと眺めて下さい!

パネルを用いて、ジョン万次郎のあゆみや当時の出来事も紹介しています。

ジョン万次郎は、たまたま海外へと漂流して帰ってきただけの人ではありません。
自分の経験や知識を生かし、日本の開国や近代化に尽力したい、という強い意志を持っていました。
知れば知るほど魅力を感じる人です。

助けてくれたホイットフィールド船長のご子孫と、中濱家のご子孫は今でも親しい交流を続けており、国際交流のモデルを教えてくれる存在でもあります。
万次郎の人生は世界規模であり、漫画のようなワクワクとスリルの連続です。

スケールが大きすぎて映像にするのは難しいと思いますが…。
いつか大型ドラマにと、すこし期待している当館スタッフなのでした。

■ 高知県立坂本龍馬記念館
開催時間/9:00~17:00(最終入館は16:30)、定休日なし
開催住所/高知県高知市浦戸城山830
駐車場/あり 普通40台・障害者用2台バス4台
料金/企画展期間700円、展示替期間500円、高校生以下無料 
お問い合わせ/高知県立坂本龍馬記念館(088-841-0001)
高知県立坂本龍馬記念館 公式HPはこちら
イマナニで「高知県立坂本龍馬記念館」の情報を見る

reported by 高知県立坂本龍馬記念館
イマナニ体験レポート