真鍋博展や50周年記念展…秋の愛媛県美術館は見どころ満載!
愛媛/松山ミュージアム Vol.1 愛媛県美術館
食欲の秋、スポーツの秋、そして芸術の秋。
少しずつ肌寒くなり冬の足音が聞こえ始めた今日この頃、皆さん様々な秋の楽しみ方を満喫していることでしょう。
その中でも今回は、「愛媛の芸術の秋」の楽しみ方について。
今年でなんと設立50周年を迎える、愛媛県美術館のご紹介をさせて頂こうと思います!
文学の町・松山は芸術の町でもあった!?
皆さんは「愛媛/松山ミュージアムガイド」というものをご存知でしょうか?
実は松山市の中心地街近辺には、多くのミュージアムや文化施設が存在しています。
今回ご紹介する愛媛県美術館や坂の上の雲ミュージアム、萬翠荘にセキ美術館、松山市立子規記念博物館などなど。
古くから愛媛松山の地に根付いてきた芸術やアート、文化、カルチャーを知ることが出来る。
そんな興味深い施設が、実はたくさんあるんです。
このガイドを制作しているのは、「愛媛/松山ミュージアム・ストリート連絡協議会」。
団体で制作されたガイドは、掲載されている上記の各施設や観光案内所、ホテル等にて無料で配布されています。
また各施設で使うことのできる割引クーポンもこのガイドには掲載中です。
せっかくであればこのガイドを片手に各施設を巡って、愛媛の芸術文化に触れる機会を作ってみても面白いかもしれません。
ちなみに、皆さんは美術館と聞くとどのような印象を持ちますか?
芸術鑑賞って、なんだか高尚な趣味のイメージで近づきがたいな…。
あるいは、美術館に展示を見に行くってなんだか敷居が高そうだよね。
そんな風に思う方もきっと多いことでしょう。
ですがそんな方にこそ見て頂きたい展示が、現在愛媛県美術館では開催されています。
それが愛媛出身であり今年没後20年を迎える、芸術家、イラストレーターの真鍋博回顧展です。
カラフルなイラストで有名な彼の初期作品は地味な油彩画!?
1932年に現在の愛媛県新居浜市で生まれ、2000年にこの世を去った真鍋博。
小説家・星新一の本の表紙のイラストを描いた人、というと、多くの方がピンとくるのではないでしょうか。
彼の没後20年を記念し今回開催されたこの回顧展では、真鍋博という人間がどのような歩みを経て、数々の作品を残してきたのか。
彼の生きていた足跡を辿るような形で、これまでの作品や貴重な資料が約800点展示されています。
元々別子銅山による鉄鋼産業で、愛媛の中でも当時かなり栄えた街だった現在の新居浜市周辺。
そこで生まれ育った真鍋博は、今で言う高校卒業と共に大学入学のため上京し本格的に芸術の道を歩み始めます。
その頃日本は第二次世界大戦の敗戦直後で、国全体に暗いムードが漂っていました。
当時まだ走り出しの芸術家として、主に油彩画に傾倒していた真鍋博。
彼の初期作品は当時の世相の影響もあり、晩年のものからは想像できないほど彩度の暗い絵が多いのも面白いポイントです。
上京後多くの芸術家と交流を深めていく中で、真鍋の中に新しい感情が芽生え始めます。
芸術というのは今も昔も、先述したように敷居が高く見られてしまうもの。
さらに油彩画という1点ものを作る自分の技法では、作品は本当にごく僅かな人にしか見られない。
自分の作品がもっと大勢の人の目に触れて欲しい。
彼は次第にそう考えるようになっていったのです。
急激に成長する印刷技術に魅せられて…訪れた真鍋博の転機
折しもこの時代、日本はいわゆる高度経済成長期。
様々な技術が目まぐるしい勢いで成長したのですが、その中で真鍋が興味を持ったもの。
それが、彼がこの後生涯をかけて携わるようになる「印刷」という技術でした。
自分の描く絵を印刷物として、多くの人々の目に止めてもらえるような「作品」にする。
そんなモードに切り替わった頃から、真鍋の作品は非常に色彩豊かな、そしてポップでキャッチーな絵柄へと変わっていきます。
それは画家・真鍋博からイラストレーター・真鍋博へと、彼が少しずつ変化を遂げ始めた瞬間でもありました。
今回の回顧展には、非常に貴重な真鍋の私物も展示されています。
その中にある、彼自身がデザインして大勢の知り合いに送っていた年賀状。
その変遷などには、真鍋の当時の意識の変化が如実に表れていたりもしますね。
そのような内的変化の中でも、真鍋自身の作風にはもちろん変わらない特徴もありました。
それは非常に緻密で繊細な、絵を描く際の線描の描き方。
見る人が見れば一目で分かる、「線の画家」とも賞賛される真鍋の精密な線描。
それはこの回顧展の一角にも展示されている、彼が傾倒した絵地図を見て頂ければ一目瞭然かと思います。
実際の作品を間近で見ると、その目も眩むような細やかさにきっと圧倒されることでしょう。
また展示されている真鍋の私物の中には、彼自身のかなり神経質で細かい性格を示す興味深いアイテムも。
それがこちらの日記帳です。
ページにびっしり書かれた1日の行動記録は、よく見ればとても細かな分刻み。
誰かと会う約束や仕事の予定はもちろん、クーラーを切る、薬を飲む、トイレに行く、という些細な日常の動作まで。
彼はこうして、日記や予定帳に事細かに書き記していたようでした。
活躍は雑誌の挿絵や本の装丁、ポスターやアニメーションなどの大衆媒体へ
その後少しずつ、印刷物の挿絵や表紙のイラスト制作、ポスターのデザインの仕事が増え始めた真鍋。
中でも彼の携わったものの1つとして有名なのが、雑誌「ミステリマガジン」の表紙絵でしょう。
この表紙絵を担当する際、真鍋は当時としてはかなり画期的な技法を用いています。
それは実物のアイテムを撮影した写真の上からイラストを描いて着色する、というもの。
実際の絵をよく見ると、洗濯ばさみやハンガー、鍵などの日用品のモチーフが絵の中に紛れ込んでいます。
このような独創性への評価が、現在の彼の大きな評価へと繋がっているのですね。
これまで様々な小説の表紙イラストを担当している真鍋。
特に読書好きの方にとっては、彼がデザインした小説がずらりと並んだこの光景はかなりの垂涎モノではないでしょうか。
その中でも特に彼と縁の深かった著名人と言えば、作家の星新一。
そして同じく作家の筒井康隆でしょう。
今回の展示では先述した星新一や筒井康隆の小説の表紙絵をデザインした際の、貴重な原画資料なども公開されています。
中でも興味深いのは彼が成果物となる印刷物の色彩に、かなり強いこだわりを見せていた点です。
デジタルデータを紙にプリントアウトしたり、はたまた紙媒体をコピー機でコピーしたり。
その際原本と印刷物の色味が微妙に異なるということを、皆さん経験したことがあるのではないでしょうか。
数々のイラストを手掛けながらも、真鍋博という人物の根っこはやはり芸術家。
自身の作品が印刷物となる際、仕上がりが寸分の狂いなく思い描いていた色味となるように。
彼は吃驚するほど緻密な色指定を、自らのイラストに書き込んでいます。
多くの方にお馴染みの星新一の小説、「ボッコちゃん」。
この小説の表紙絵に、そんな細かな色指定が記されている貴重な資料も展示されていますよ。
自らのキャリアの後期では、CMやアニメーションの絵コンテや作画も手掛けた真鍋。
そんな彼の作品の軌跡を見ていると、私たちの身の周りに溢れたCMやアニメ、掲示物などの大衆媒体。
これらも全て、ある意味数々の芸術家たちが作品とも呼べるのではないか。
そんなことを思わせてくれるような、面白い展示となっているとも言えるでしょう。
真鍋博展だけじゃない!愛媛の芸術の歴史に触れる設立50周年展も見てみよう
愛媛県美術館で楽しめる「愛媛の芸術の秋」はこれだけではありません!
冒頭で述べた通り、ここ愛媛県美術館は2020年でなんと設立50周年を迎えます。
それを記念して、現在この愛媛という土地で芸術がどのように発展してきたか。
そして愛媛からこれまで、どれだけ大勢の素晴らしい芸術家が輩出されたか。
そんな愛媛の芸術の歴史がまるごと覗けるような、非常に興味深い企画も行われています。
実はこの展示、先ほどまでご紹介してきた真鍋博展をご覧頂いた方は、同じ半券でそのまま入場頂けます。
せっかくですので、お時間の許す方はこちらもあわせてぜひ見てみて下さいね♪
こちらの愛媛県立美術館設立50周年記念展では、この美術館が設立となるまでの県下の芸術家たちの歩みも記されています。
またその時代の流れと共に、その時々に活躍していた愛媛の偉大な芸術家たちの作品も数多く展示。
その数何と約170点!
つい先日ここで企画展を行っていた畦地梅太郎や、百貨店・三越のブランドイメージ確立に大きな影響を与えた杉浦非水など。
全国的にも著名な芸術家から、表立った評価は少ないものの愛媛の美術史を語る上では欠かせない人物の作品まで。
非常に幅広い芸術家の作品が一堂に会した、とても貴重な展示会となっているんですよ。
先述の企画展が真鍋博という1人の人物の歴史を掘り下げる展示であるとするなら、こちらは数多くの人物の作品から愛媛の歴史を掘り下げるような。
そんな興味深い催し物ともなっています。
ここまでの数の愛媛のアーティストの作品が集まることは、実はかなり珍しいこと。
随分久しぶりに日の目を見たレアな作品もあるそうなので、見ておいて損はないでしょう。
見ているだけじゃつまらない…そんな人でも美術館は楽しめる♪
寒くなってきて外出もおっくうだから、屋内でアートを楽しむのもたまにはいいかも。
そんなふうに芸術やアートに興味が湧いてきた方も、中にはいるんじゃないでしょうか。
でも美術館って、結局いろんな作品を見るだけだからなんだか飽きちゃいそう。
うちには落ち着きのない子どもがいるから、静かな美術館はなかなか楽しめないかも…。
この記事を読んでいる皆さんの中に、そうお考えの方はいらっしゃいませんか?
でも大丈夫!結論からお伝えすると、そんな方でも美術館を楽しむ方法があるんです!
その裏技的な美術館の楽しさを、最後にちょっとだけ皆さんにもお教えしちゃいますね。
作品の鑑賞だけじゃ、正直あんまり面白くない…。
そんな方にはぜひ、こちらの美術館で行われているワークショップへの参加をオススメします♪
愛媛県美術館では、初心者の方でも気軽に楽しめるアート体験ワークショップを多数開催しています。
学生からお年寄りまで参加できる、シルクスクリーンやリトグラフなどの版画技法、木工、染織、写真などを一から教えてくれるアトリエ教室。
ハロウィンやクリスマスなどのイベントアイテムやコラージュ作品、世界に1つだけのオリジナル図鑑やグッズ作りを親子で楽しめるワークショップなど。
ほとんどのレッスンが材料費数百円で参加できる、お手軽なものとなっています。
芸術やアートにちょっと興味が湧いたけど、見てるだけじゃつまらない…。
そんな方はせっかくなら趣味の一環として、自身がアートを創る側になってみませんか?
現在愛媛県美術館で開催されているワークショップの詳細はこちら。
愛媛県美術館 公式HP 講座・ワークショップはこちら
ご興味のある方は、ぜひチェックしてみて頂ければと思います。
いかがでしたか?
本日は愛媛県美術館で現在行われている展示や、施設の魅力をご紹介致しました。
今年の秋は美術館で、愛媛の芸術を楽しんでみてはいかがでしょう?
アートとの出会いが、きっと皆さんにこれまでにない新たな刺激を与えてくれるかもしれませんよ。
■ 企画展「没後20年 真鍋博2020」
開催日時:10月1日(木)~11月29日(日)9時40分~18時(入場は17時30分まで)
料金:一般(高校生以上)1000円、高大生600円、小中生300円
※本券にて「1970⇔2020未来へ 愛媛県立美術館設立50周年記念展」(9/1~11/6)をあわせてご覧いただけます。
※満65歳以上の方は、当日900円で入場できます。生年月日の分かるものをご呈示ください。
※障がい者手帳等をお持ちの方は、その介護者1人を含め、無料でご入場いただけます。障がい者手帳等をご呈示ください。
※団体(20名以上)の方は前売料金で当日ご入場いただけます。
※本展覧会もしくは「エコール・ド・パリの色と形」展(11/14~1/31)の半券をご持参の方は、前売料金で当日ご入場可能です。
※セキ美術館「真鍋博と印刷会社」(9/4~11/29)の観覧券をお持ちの方は当日前売料金でご入場いただけます。
イマナニで「企画展「没後20年真鍋博2020」」の情報を見る
■ 特別展「1970⇔2020 未来へ 愛媛県立美術館設立50周年記念展」
開催日時:9月1日(火)~11月6日(金)9時40分~18時(入場は17時30分まで)
料金:一般500円、高大生300円
※中学生以下、満65歳以上の方、障がい者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料です。
※企画展「没後20年 真鍋博2020」の観覧券でご入場いただけます。
※第69回秋季県展の観覧券をお持ちの方は、団体料金でご入場いただけます。
イマナニで「特別展 1970⇔2020 未来へ 愛媛県立美術館設立50周年記念展」の情報を見る
■ 愛媛県美術館
開催住所:愛媛県松山市堀之内
お問い合わせ先:愛媛県美術館
お問い合わせTEL:089-932-0010
営業時間:9:40~18:00
休日:月曜日(祝日及び振替休日に当たる場合は、その翌日)ただし、毎月第1月曜日は開館、翌日が休館
料金:コレクション展:一般300円、大学・高校生200円
駐車場:普通50台・障害者用4台県庁西駐車場が2時間まで利用可。パーキングパーミットの駐車場は美術館敷地内にあります。
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愛媛県美術館 公式HPはこちら