知る人ぞ知る隠れアートスポット・セキ美術館の魅力とは?

  

愛媛/松山ミュージアム Vol.2 セキ美術館

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全国的にも温泉街として有名な松山の道後温泉。
この道後エリアには、様々な興味深いスポットがたくさんあるのをご存知でしょうか?

そのスポットの1つが、道後温泉駅から5分ほど歩いた住宅街の中にある「セキ美術館」。

現在松山の美術館やアートギャラリー、観光案内所、ホテル等の各施設で配布されている「愛媛/松山ミュージアムガイド」。
このガイドにも掲載されている、知る人ぞ知る美術館です。

道後の温泉街に美術館があるなんて知らなかった!
あるいは、存在は知っているけど一度も行ったことがないかも。
本記事をお読み頂いている方の中には、きっとそんな方もいらっしゃると思います。

実は、ここセキ美術館には大勢の人々が知る有名な芸術家の名作も多数。
そんな知られざる隠れアートスポットの魅力を今回はご紹介致しましょう。

間もなく開館24年目を迎えるセキ美術館の歴史とは?

こちらのセキ美術館の開館は1997年1月。
2021年で開館から24年を迎えるこの施設は、その歴史をいい意味であまり感じさせない、モダンで洗練された雰囲気の建物ともなっています。

元々ここに収蔵されている美術品は、現在の館長の個人コレクションだったものたち。
その数が少しずつ増えていく中で、美術館として作品を飾る場所を作り、大勢の方にもアートを楽しんでもらえないか、という思いもあり開館へとつながって行きます。

現在松山には先述のガイドブックにも掲載の通り、数か所の美術館やギャラリーが街の中心地付近に点在しています。
そのどれもが、基本的には松山にゆかりのある作家や作品の展示がほとんどです。

セキ美術館が、他のギャラリーと一線を画している魅力はここにあります。
この美術館では愛媛松山に関わらず、館長の磨き抜かれた審美眼を以てして所有された作品のみを展示しているのです。

また芸術家そのものの人間性に惚れ込み、館長が所蔵を決めたものも多数コレクションされています。
それゆえに、館長のポリシーが大いに反映された展示内容となっている部分が、セキ美術館の大きな魅力であり、他のギャラリーにはないユニークなポイントにもなっているのです。

加えて、それらの作品にふさわしい環境も整っています。
セキ美術館の建物自体は、そこまで大きなものではありません。

しかし吹き抜けの階段による開放感のある広がりや、一方でプライベート感のある居心地の良い展示室。
順路通りに進む中で、空間と展示作品が一体となった不思議な光景が楽しめるさりげない配置、など。

作品鑑賞を楽しむ環境として、非日常さを感じられる演出は素敵な時間を約束してくれます。

美術館の展示内容は、基本的には春夏秋冬の季節ごとにテーマ性を持って入れ替わります。
現在は冬の所蔵作品展「加山又造 上野のカラスと藝大カレンダー展」を2020年12月4日(金) ~ 2021年2月28日(日)まで開催中です。

その時期の季節感を取り入れた作品の展示が主流ですが、毎年新しいテーマを決めて同じ時期に訪れても、そのたびに新鮮な気持ちで鑑賞が楽しめるように配慮されています。

さらにセキ美術館と言えば、有名なのは「ロダンの部屋」。
ブロンズ像《地獄の門》や《考える人》の制作者であるオーギュスト・ロダン。

彼の作である大理石彫刻《ファウナ(森の妖精)》を始めとした作品十数点。
これらの常設展示のスペースには、彼の名作を一目見ようと県外から足を運ぶ方も大勢います。

セキ美術館に現在展示されている作品の概要をご説明しましたが、ここからはより具体的に現在開催中の「加山又造 上野のカラスと藝大カレンダー展」も含め、展示されている作品をいくつかご紹介致しましょう。

セキ美術館・冬の展示会期でチェックしたい作品はこちら

まずご紹介するのは、現在の展示の目玉でもある画家・加山又造の数々の作品です。

日頃芸術にあまり触れないという方は、初耳の芸術家かもしれません。
加山又造は、戦後の日本画壇を代表する日本画家であり、東山魁夷・杉山寧・髙山辰雄・平山郁夫そして加山又造の五名で、昭和の日本画五山と総称されるほどの人気作家です。

加山又造は、このセキ美術館とも実は非常に縁の深い人物。

この施設の入り口にある「セキ美術館」の揮毫も、彼が書いたものです。
そんな加山又造の作品が、今回の展示では非常に幅広く展示されています。

彼の作品と言えば、猫や桜を描いた繊細な日本画の作品のイメージが強い、という方も多いことでしょう。
彼の人気モチーフの1つでもある猫を、蝶々と鮮やかなコントラストの色彩で描いた《凝》も、今回の展示ではお披露目されています。

残念ながら季節テーマとの関係で、彼のもう1つの人気モチーフである桜の作品は今回の会期中は展示されていません。
次回3月の展示期間にはお披露目されるかもしれませんので、春先に再び訪れてはいかがでしょうか。

このように、繊細な落ち着いた雰囲気の日本画を描くイメージが強い加山又造。
しかし元々彼は動物をメインのモチーフとした、ダークで原始的な雰囲気の独創的な作風の絵を数多く描いてきています。

今回の期間展示のメインの1つである、《飛ぶ黒い鳥》。
この作品からはそんな彼のややアンダーグラウンドにも思える初期の作風を垣間見る事ができます。

そして加山又造といえば日本画の技術と遜色ない程、版画家としても優れた才能を持っていた人物でした。

そんな彼の版画家としての稀有な才能の片鱗を楽しめるのが、『上野のカラス』です。
こちらは元々、東京藝術大学の版画専攻の卒業生有志によって毎年制作されているカレンダーへの掲示作品です。

今回の会期では、そのカレンダーに掲載されていた加山又造のカラスだけを集めた展示。
そして、そのカラスの作品がカレンダーに掲載された状態のものも鑑賞する事ができます。

毎年描かれたカラスの違いを楽しむもよし、様々な芸術家の作品が集まるカレンダーデザインを楽しむもよし。
鑑賞の楽しみ方は、実に多彩なものともなっています。

今回の展示で、加山又造に次いで展示数が多いのが小磯良平。
女性をモチーフとして描くことの多い彼の作品は、絵によってタッチや雰囲気が少しずつ違う点も通して作品を見る面白さの1つではないかと思います。

特に人気となっているのは、彼の作にしては珍しい背景が白抜きとなっている《少女》。
この少女の絵は、まだ大人になりきらない少女の幼さと、どこか憂いを含むような大人びた表情が同居する不思議な魅力のある一枚です。

それ以外にも、普段あまり美術に興味がない方でも聴いたことのある芸術家の作品もいくつか。
先述のロダンや、日本画家の横山大観などの名前は某鑑定番組などで知ってる、という方も多いことでしょう。

また個性的な髪形と丸淵の眼鏡が、当時の男性としては非常にファッショナブルだったということもあり人気の高い藤田嗣治。
彼らしい線やタッチで描かれている作品《婦人像》は、彼と生前親交があったとされる国吉康雄の《馬を選ぶ》と共に展示されています。

さらに、昔から様々な作品やメディアのモチーフにも描かれている風神雷神。

この2人が描かれた大元の作品は、皆さんが一度は教科書などで見たことのある俵屋宗達の屏風絵ですね。
その後、尾形光琳や酒井抱一、鈴木基一など、いわゆる琳派と呼ばれる流派の中で脈々と受け継がれてきたこのテーマ。

その系譜の末端とも言われている前田青邨の《風神雷神》も、今回の会期では展示されています。

密を避けての冬のお出かけに、アートに触れる時間はいかが?

いかがでしたか?

今回は道後「セキ美術館」の魅力を、ギャラリーで実際に展示されている作品も交えながらご紹介させて頂きました。
もちろん、今回ご紹介しきれなかった作品も美術館にはまだまだ40点以上展示されています。

最後に美術館と言えば、施設内のショップも楽しいスポットです。

実際に展示されていた作品のポストカードなどが、もちろんここセキ美術館でも販売中。
お気に入りとなった作品の絵はがきを買って帰る、という楽しみ方も当然アリですよね。

今まで美術館なんて行ったことなかったな、という方はぜひこの冬、道後へお出掛けの際、セキ美術館に訪れてはいかがでしょうか?
そこには新しい感動や発見との出会いが待っていますよ。

■ セキ美術館
開催住所:愛媛県松山市道後喜多町4-42
お問い合わせ先:セキ美術館
お問い合わせTEL:089-946-5678
営業時間:午前10時~午後5時(入館は閉館の30分前まで)
休日:月曜・火曜(2020年12月28日~2021年1月5日までは休館です。)
料金:一般/700円(大学生を含む)小・中・高校生/500円
駐車場:普通10台
イマナニで「セキ美術館」の情報を見る
セキ美術館 公式HPはこちら


reported by イマナニ編集部 曽我美なつめ
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